【SAP】ATP利用可能在庫確認について徹底解説!

【SAP】ATP利用可能在庫確認について徹底解説!

ATP(Available To Promise)とは、受注・出荷時に出荷可能な在庫があるかないかのチェックし、在庫引当処理をすることです。

SAP標準でATP利用可能在庫確認機能が備わっています。

この記事ではATP利用可能在庫確認とは何か、ATP利用可能在庫確認のロジックについて解説していきます。

ATP利用可能在庫確認の設定

ATP利用可能在庫確認をするには、品目マスタ + 受注の納入日程カテゴリ の設定が必要です。

品目マスタ or 受注の納入日程カテゴリ・出荷の明細カテゴリ のどちらかの設定ができていないと、ATPチェックが動きません。

ATP_設定前提

 

品目マスタの設定箇所

品目マスタ設定画面の「販売: 一般/プラントビュー:利用可能在庫確認」に設定値を入力します。

 

設定値は予めコンフィグで「利用可能在庫確認制御」の設定をしておきます。(T-code:OVZ9)

利用可能在庫確認制御は、利用可能在庫確認 x 確認規則 の組合せで設定します。

利用可能在庫確認

  • 01:日別所要量
  • 02:個別所要量

01:日別所要量は補充リードタイムなしで、02:個別所要量は補充リードタイムありです。

ここの設定で在庫タイプ:利用可能在庫以外の在庫タイプも引当対象に入れるかどうかの制御をします。

 

確認規則

通常の受注伝票の場合は、「A」を選択します。

  • A:受注伝票

 

受注:納入日程カテゴリの設定箇所

ATPチェックをON にする納入日程カテゴリのコンフィグ画面から「トランザクションフロー:利用可能在庫」にチェックを入れます。

 

ATP利用可能在庫確認のロジック

ATP利用可能在庫確認のロジックとして、以下3つのポイントがあります。

  1. 既存在庫数量・受注数量の比較
  2. プラント・保管場所・ロット単位で在庫数量比較
  3. 登録された受注伝票順で在庫引当

イメージが湧きづらいと思うので、ケーススタディをベースに解説していきます。

 

ケーススタディ①(プラント・保管場所・ロット指定)ATP_ケーススタディ1_プラント・保管場所・ロット指定

受注伝票にプラント・保管場所・ロットを指定した場合、対象の在庫が引きあたります。

 

ケーススタディ②(プラント・保管場所指定)

ATP_ケーススタディ2_プラント・保管場所指定

受注伝票にプラント・保管場所を指定した場合、プラント・保管場所の中にある在庫が引きあたります。

ロットが複数ある場合、総量から在庫引当がされます。

 

ケーススタディ③(プラント・ロット指定)

ATP_ケーススタディ3_プラント・ロット指定

受注伝票にプラント・ロットを指定した場合、プラント・ロットの中にある在庫が引きあたります。

保管場所が複数ある場合、総量から在庫引当がされます。

 

ケーススタディ④(プラントのみ指定)

ATP_ケーススタディ4_プラント指定

受注伝票にプラントを指定した場合、プラントの中にある在庫が引き当たります。

保管場所・ロットが複数ある場合、総量から在庫引当がされます。

 

ケーススタディ⑤(複数受注伝票登録)

ATP_ケーススタディ5_複数受注伝票

同じ在庫に対し、受注伝票が複数登録された場合、受注伝票の登録順に在庫引当がされます。

そのため、在庫:400 に対し、

  • 受注伝票:1000000001 に在庫:300 引当
  • 受注伝票:1000000002 に在庫:100 引当(残り100は未引当のため生産が必要)

ATP利用可能在庫確認では「納入日付」は関係なく、「伝票登録日」を起点に引き当てられます。

納入日付や得意先による優先度ごとに在庫引当をしたい場合は、「バックオーダー処理」をする必要があります。

バックオーダー処理については、こちらの記事で解説していきますので、読んでみてください。

【SAP】バックオーダー処理について徹底解説!

 

ケーススタディ⑥(在庫タイプ)

ATP_ケーススタディ6_在庫タイプ

引き当てる在庫は、在庫タイプを見て引き当てをおこないます。

上の例では、利用可能在庫のみを引当可にしていますが、品質検査中在庫・保留在庫・積送中在庫などを引当可にするかは、品目マスタにセットする「利用可能在庫確認」のコンフィグで制御します。

 

ATP利用可能在庫確認と生産形態

ATP利用可能在庫確認は、「見込生産」の場合に有効です。

見込生産の場合、受注に関係なく需要予測に基づいて生産をします。

そのため、受注伝票を登録しても受注に在庫が引き当たらないため、受注に対して確実に出荷できるか分かりません。

そこでATP利用可能在庫確認を使って、受注に対して在庫を引き当てることをします。

 

一方で「受注生産」の場合、受注紐づきの製造指図に対する生産品入庫の段階で「受注在庫」として受注伝票に紐づいた在庫となります。

そのため、「受注生産」の場合は、ATP利用可能在庫確認をする必要はありません。

受注在庫については、こちらの記事で解説していますので、気になる方は読んでみてください。

【SAP】受注在庫について徹底解説!

 

今日学んだこと!

  • ATP利用可能在庫確認をするには、品目マスタ・受注納入日程カテゴリの両方の設定をONにする必要がある
  • ATP利用可能在庫確認は、既存在庫数量/受注数量を比較し、登録された受注伝票順に、プラント・保管場所・ロットをキーに在庫引当をする
  • ATP利用可能在庫確認は、見込生産形態の場合に使用する

 

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TK
製造業界、素材産業にて、SAP ERPの導入・保守を経験。会社の情報システム部門→外資系コンサル会社→育休→独立(フリーランス)。 SAP導入プロジェクトの仕事をする傍ら、SAPに関する情報をブログで発信。