SAP COモジュール(管理会計)を使い、標準原価計算・実際原価計算を行うことにより、標準原価・実際原価の比較から「原価差異分析」ができるようになります。
「原価差異分析」ができることにより、コストベースで購買・製造のどこでロスがあったのかを分析でき、素早い経営判断をすることが可能になります。
この記事ではSAPでの原価差異分析の考え方・方法について解説していきます。
原価計算の考え方
原価差異分析を理解するうえで、まずは標準原価・実際原価について理解しておく必要があります。
標準原価計算
標準原価とは、生産マスタであるBOM・作業手順を元に、材料費・加工費の積み上げにより、各品目の原価を計算する仕組みのことです。
標準原価は、いわば理論値原価のことです。
詳しくはこちらの記事で解説しているので、深く理解したい方は、こちらの記事をまずは読んでみてください。
実際原価計算
実際原価とは、購買実績・製造実績を元に、実際の材料費・加工費の積み上げにより、各品目の原価を計算する仕組みのことです。
実際原価は、実績値(数量や価格)を元に計算されます。
詳しくはこちらの記事で解説しているので、深く理解したい方は、こちらの記事をまずは読んでみてください。
原価差異分析の考え方
製造指図勘定
原価差異は製造指図単位で算出されます。
- 比較元の標準原価は、BOM・作業手順から算出
- 比較先の実際原価は、製造指図に対する入庫・出庫作業時間計上から算出
イメージで表すと、このようになります。

そして原価差異は、出来高(入庫)・材料費(出庫)・加工費(作業時間)のどこかで差異が出ます。

原価差異カテゴリ
原価差異にもいくつか種類があります。 原価差異の種類を「原価差異カテゴリ」と言います。
原価差異は大きく「インプット差異」と「アウトプット差異」の2つに分かれます。
- 「インプット差異」は、材料費(出庫)・加工費(作業時間)のT勘定の左側の原価差異のことです。
- 「アウトプット差異」は、出来高(入庫)のT勘定の右側の原価差異のことです。

それぞれの原価差異カテゴリの内容がこちらです。

- 数量差異は、マスタと実績の差異があった場合、
- 価格差異は、 標準原価と異なる原価・単価になった場合、
- 資源消費差異は、マスタと異なる品目を製造で使用した場合、
- 残余差異は、その他の差異(例えば、指図上で数量変更をした場合)
原価差異分析方法
SAPの原価差異分析方法は主に2つあります。
1つは品目単位での分析、もう1つは製造指図単位での分析。
品目単価分析(T-code:CKM3)
「品目単価分析」では、品目単位で購買・製造・消費時の標準原価・実際原価・原価差異・原価構成を確認することができます。
原価構成ごとに分析ができるため、材料費で原価差異が出たのか、加工費で原価差異が出たのかなど、どこを将来的に改善していくべきかということが分かります。
製造指図照会(T-code:CO03)
実際原価計算の最小単位は「製造指図」です。
そのため実際原価計算の最小単位である製造指図ごとに、原価差異の確認が可能です。
製造指図照会では、標準原価・実際原価・原価差異を原価要素ごとに確認が可能です。
製造指図のどの構成品目で原価差異が出たか、どの活動タイプで原価差異が出たかなど、品目単価分析(T-code:CKM3)より細かく分析ができます。
ただ実際の業務では1つ1つの製造指図を確認していくわけにはいかないので、まずは品目単価分析(T-code:CKM3)で品目単位で原価差異分析をし、原価差異が大きい品目に絞って製造指図照会(T-code:CO03)で原価差異を確認していきます。
原価改善活動
ここまでで原価差異の考え方・確認方法について解説してきました。
原価差異の種別・確認方法が分かったと思うので、最後は原価改善活動について少し触れていきます。
原価改善ポイント種別
改善ポイントは大きく以下8つに分けて検討を進めていくことができます。

購買原価改善活動
購買の場合、購買発注伝票の数量より入庫数量が少ない、標準原価より高い価格での購買 といったケースで原価差異が出ます。
購買での原価差異が大きい場合、以下の対応方法が考えられます。
- 仕入先変更
- 価格交渉
- 品目変更
- 発注数量削減
製造原価改善活動
生産の場合、出庫数量に対して入庫数量が少ない、作業時間が想定より多くかかってしまう、といったケースで原価差異が出ます。
生産での原価差異が大きい場合、以下の対応方法が考えられます。
- 作業員の加工スキルアップ
- 製造機器のリプレース
- 製造工程見直し
- 作業員の導線改善
改善活動については、あくまで例 です。
ここは会社や工場ごとに環境・状況が異なるため、どこの原価差異大きいか分かる→改善活動につなげる ということが、まず大事なステップになります。
サマリ
ERPで購買実績・製造実績を会計原価と連携させることにより、原価差異分析ができるようになります。
標準原価・実際原価を元に原価差異分析をすることはERPの醍醐味です。
SAPを導入するプロジェクトで、この原価差異分析がメインの目的の1つになるプロジェクトが多いです。
SAPでCO/PPモジュールを使う = 原価差異分析をする ということなので、この記事を読んで少しでも原価差異分析について理解を深めていただければと思いまうす。