この記事では、PP(生産管理)モジュールのプロセス概要とプロセスごとのトランザクションについて解説します。
プロセスの全体概要を理解することで、それぞれのトランザクションの細かい動きが理解できます。
まずはPPモジュールの全体プロセスを掴めるように、初心者の方でも分かるようにやさしく解説していきます。
Contents
全体プロセス
生産管理は、<計画独立所要量 or 受注> → <MPS/MRP(所要量計算)> → <CRP(能力計画)> → <製造指図> → <製造実績>という5つのプロセスで構成されます。
大きくは「生産計画」と「製造実績」の2つに分かれます。
- 計画独立所要量 or 受注 で、最終製品の販売予定数量 or 受注数量を登録
- MPS/MRP(所要量計算) で、1.計画独立所要量 or 受注 をもとに、各品目の必要生産数量・購買数量を算出
- CRP(能力計画) で、2.MPS/MRP(所要量計算)で算出された生産予定(負荷山積み)を製造能力に合わせて負荷平準化
- 製造指図 で、2.MPS or 3.CRPの生産計画予定をもとに、製造指図を登録
- 製造実績 で、4.製造指図をもとに製造実績(生産品入庫・構成品出庫・作業時間)を計上
生産プロセスは、主にこの5つのプロセスの順番に流れます。
それでは1つずつ、どのようなプロセスなのか詳しく解説していきます。
計画独立所要量 or 受注
計画独立所要量 or 受注では、販売する製商品の販売予定数量 or 受注数量を登録します。
- 見込生産形態の会社の場合は、「計画独立所要量」
- 受注生産形態の会社の場合は、「受注」
です。
生産形態と対象業種例は、このようになっています。
計画独立所要量(T-code:MD61)
計画独立所要量とは、販売する製商品の見込数量(計画独立所要量)のことで、見込生産形態の場合に、T-code:MD61で登録します。
見込生産の場合は、T-code:MD61で登録された、計画独立所要量をもとに生産計画が立てられていきます。
受注(T-code:VA01)
受注生産の場合は、T-code:VA01で登録された、製品の受注数量をもとに生産計画が立てれらていきます。
MPS/MRP(所要量計算)(T-code:MD01N)
「計画独立所要量」or「受注数量」をもとに、製品に紐づく「半製品」・「原材料」がいくら必要なのかを算出します。(所要量計算と呼びます。)
- MPSとは、Master Production Schedule の略で、「半製品」のための言葉。つまり、最終的に製造指図につながります。
- MRPとは、Material Requirement Planning の略で、「原材料」のための言葉。 つまり、最終的に購買依頼につながります。
MPS・MRPと半製品向け・原材料向けと言葉を使い分けますが、所要量算出の計算ロジックはどちらも同じです。
所要量・現在庫・入出庫予定・安全在庫を加味して、必要な生産数量が算出されます。
CRP(能力計画)(T-code:CM50)
MPS・MRP(所要量計算)をもとに、生産能力計算をします。
あくまでMPS・MRP(所要量計算)所要量計算は、いつまでに・いくら必要か ということを計算するのみです。
そのため、実際に生産能力を超えた所要量になってしまうこともあります。
そのため、生産能力所要計画により、会社の製造機器能力に合うように生産の負荷分散をします。
(参考)生産計画プロセス解説記事
生産計画プロセスの詳細解説記事はこちらで解説していますので、ぜひ参考に読んでみてください。
製造指図
生産計画をもとに、製造現場への「製造指図」を登録します。
製造指図とは、
- だれが
- いつ
- 何の品目を いくら使って
- 何の品目を いくら生産する
といういわゆる製造の指示情報が入っています。
製造指図の登録方法は2つあり、「生産計画をもとに登録」と「マニュアルで登録」の2パターンです。
計画手配→製造指図変換(T-code:CO41)
「生産計画をもとに登録」の場合、T-code:CO41 を使用します。
MPSを実行することにより、計画手配(製造指図の確定前伝票)が登録されます。
実際にMPSを実行し、MPSの結果通り製造に取り掛かるのであれば、T-code:CO41 を使用し、計画手配から製造指図に変換します。
製造指図登録(T-code:CO01 or CO08)
製造指図をマニュアルで登録する場合、T-code:CO01 or CO08 を使用します。
- CO01 は、見込生産の場合に使用
- CO08 は、受注伝票をキーに登録するため、受注生産の場合に使用
T-code:CO01 or CO08 を使うケースとして、生産計画システムが別である場合に、SAPでマニュアルで登録したり、インターフェースを使用して製造指図を登録します。
製造実績
製造実績では、生産品入庫・構成品出庫・作業時間の3つを計上します。
生産品入庫(T-code:MIGO)
生産品入庫とは、製造によって生産された品目・数量・ロットをT-code:MIGOにて入庫計上することです。
構成品出庫(T-code:MIGO)
構成品出庫とは、製造で使用された品目・数量・ロットをT-code:MIGOにて出庫計上することです。
作業時間(T-code:CO11N)
作業時間とは、製造にかかった作業時間を活動タイプ(作業時間計上の項目)ごとにT-code:CO11Nにて計上することです。
(参考)製造実績プロセス解説記事
製造実績プロセスについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。
(参考)PPマスタ解説記事
ここまでで解説してきたプロセス(トランザクション)を実行するには、事前のマスタ設定がとても重要です。
こちらの記事でPPマスタについて解説しているので、ぜひ読んでみてください。
サマリ
ここまでで生産プロセスの流れについて解説してきました。
計画独立所要量 or 受注数量をもとに生産計画を実行し、生産計画から出された製造指図に対して製造実績を計上する というプロセス自体はシンプルです。
ただし、PP(生産モジュール)が難しいと言われるゆえんとして、
- 生産マスタ設定を細かく理解しなければいけない
- 所要量計算・能力計算のロジックを理解しなければいけない
- 製造実績がどう原価計算と結びつくかを理解しなければいけない
というポイントがあります。
これらは、別記事で詳細に解説していますので、ぜひ読んでみてください。