SD(販売管理)モジュールのマスタについて解説します。
マスタの設定をもとに、受注・出荷・請求のトランザクションデータに値がセットされます。
そのため、マスタ設定をうまくやっておけば、受注登録などが楽になります。
どのようなマスタなのか、どんな設定ができるのかを理解できるように解説していきます。
Contents
SDマスタ一覧
SDマスタは主に以下の5つがあります。
マスタ名 | T-code | 概要 |
BPマスタ(得意先マスタ) | BP | 得意先の情報をセットするマスタ |
品目マスタ | MM01 | 販売する品目(製品・商品など)の情報をセットするマスタ |
得意先/品目情報レコード | VD51 | 得意先 x 品目の情報をセットするマスタ。同じ製品でも得意先によってセットする値を変えることが可能。 |
条件マスタ(販売価格) | VK11・VK12 | 得意先 x 品目ごとに価格などの情報をセットするマスタ |
出力マスタ |
|
受注・出荷・請求情報を得意先ごとに、どのタイミング・どう出力するか・どこに出力するか管理するマスタ |
それぞれのマスタはこのような関係で紐づいています。
BPマスタ(得意先マスタ)(BP)
ERP 6.0までは得意先マスタとして管理されていましたが、
S/4 HANAから、得意先も仕入先も「BPマスタ」として管理されるようになりました。
BPマスタでは、「BPロール」により、得意先なのか仕入先なのかのロール設定をします。
1つのマスタに複数のロール付与が可能です。
例えば、あなたの会社にとって、株式会社ABCが 仕入先でもあり・得意先でもある場合、BPマスタ:100001 に「仕入先ロール」と「得意先ロール」を付与し、管理します。
このことで、S/4 からは得意先・仕入先が同じコードで管理できるようになり煩雑さがなくなりました。
SDで使用するには、「ビジネスパートナー」「得意先」「FI得意先」の3ロールを割り当てることは最低限必要です。
ビジネスパートナーロール
ビジネスパートナーロールには、会社名・住所など、他ロールでも共通して使用する項目を設定します。
得意先
営業所・通貨・出荷条件(海路・陸路・空路など)・出荷プラント・取引先機能・販売エリアなど、受注・出荷・請求のトランザクションの元となる項目を設定します。
FI得意先
統制勘定コード(売掛金勘定)や支払条件(いつまでに支払いしてもらうか)など、請求処理に使用する項目をマスタで設定します。
品目マスタ(MM01)
品目マスタは、販売する品目(製品や商品)の設定をします。
※製品とは自社の内製品、商品とは仕入れたモノをそのまま販売する品目
販売品目の場合、赤字の「販売ビュー」の拡張(設定)が必要です。
※製品の場合はMRP・作業計画、商品の場合は購買管理 の拡張(設定)も必要。
品目分類 | ビュー |
製品 |
|
販売:販売組織1
販売組織1ビューでは、販売エリア単位で設定可能です。
主に「販売単位」「出荷プラント」「品目グループ」「税分類」「販売ステータス」などを設定します。
- 販売単位:基本数量単位(原価計算の単位)と異なる場合、販売時の単位を設定します。(例:原価計算はKGだが、販売はSETでしている場合、”SET”と設定)
- 出荷プラント:出荷するプラントを設定
- 品目グループ:製品の品目グループを設定。分析時など品目グループでサマリなどが可能。
- 税分類:製品の税分類を設定(税10%や輸出なら非課税など)
- 販売ステータス:試作中・販売中止などのステータス管理をし、販売可・不可の制御をする
販売:販売組織2
販売組織2ビューでは、販売エリア単位で設定可能です。
主に「品目価格設定グループ」「明細カテゴリグループ」「品目階層」などを設定します。
- 品目価格設定グループ:複数の品目の価格が同じ場合、同じ値を設定(品目価格設定グループを用いることにより、価格マスタのメンテナンスを共通化できる)
- 明細カテゴリグループ:受注伝票の品目の処理方法を制御(受注生産なら受注在庫で管理、無償なら価格設定なし、など。。。)
- 品目階層:品目のグルーピングに使用。分析時など品目グループでサマリなどが可能。
販売:一般/プラント
販売:一般/プラントビューでは、出荷プラント単位で設定可能です。
主に「利用可能在庫確認」「輸送グループ」「積載グループ」などを設定します。
- 利用可能在庫確認:受注品目の納入日付に対し、在庫の有無チェック機能の制御(日別所要量は汎用在庫に対して確認、個別所要量は受注在庫に対して在庫確認)
- 輸送グループ:輸送経路を決定するための条件
- 積載グループ:出荷ポイントを決定するための条件
得意先/品目情報レコード(VD51)
得意先/品目情報レコードは、得意先 x 品目でマスタ設定をします。
使い方は、製品Aを 得意先X、得意先Y それぞれに販売する場合、得意先/品目情報レコードにて、
-
- 得意先X x 製品A の設定
- 得意先Y x 製品A の設定
が可能です。
主に、「得意先品目コード」「得意先品目テキスト」「出荷プラント」「最小納入数量」「分割納入区分」「分割最大回数」「過少納入許容範囲」「過剰納入許容範囲」「過剰納入無制限フラグ」を設定します。
- 得意先品目コード:得意先側の品目コードを設定
- 得意先品目テキスト:得意先側の品目テキストを設定
- 出荷プラント:この得意先専用の出荷プラントを設定
- 最小納入数量:最低限出荷しないといけない数量
- 分割納入区分:受注に対し、分割納入してもよいか・だめか
- 分割最大回数:分割納入OKの場合、最大何回まで分割してもよいか
- 過少納入許容範囲:受注に対し、何%までなら納入を下回ってもよいか
- 過剰納入許容範囲:受注に対し、何%までなら納入を上回ってもよいか
- 過剰納入無制限フラグ:受注に対し、いくらでも納入数量が上回ってもよいか
得意先/品目情報レコードを設定する場合、得意先マスタ・品目マスタよりも優先されます。
例えば、品目マスタで「出荷プラント:1000」と設定、
得意先/品目情報レコードで「出荷プラント:2000」と設定していた場合、
受注伝票には、「出荷プラント:2000」がセットされます。
得意先品目情報レコードの設定方法については、こちらの記事で解説していますので、気になる方は読んでみてください。
条件マスタ(販売価格)(VK11・VK12)
条件マスタとは、販売価格を設定するマスタのことです。
例えば、製品Aを 得意先X、得意先Y それぞれに販売する場合、
-
- 得意先X x 製品A ⇒ 100円 / PC
- 得意先Y x 製品A ⇒ 120円 / PC
といった設定ができます。
また、価格に加え、「運賃」「追加料金/値引き」「税」の設定もします。
「追加料金/値引き」に関して、スケールを使用し、パーセント or 数量依存 or 金額依存にて、金額増減が可能です。
例えば数量依存の場合、
- 100 PC以上お買い上げの場合、-5%
- 1,000 PC以上お買い上げの場合、-10%
といった価格のスケール設定が可能です。
通常、価格はある日を境に、変更されます。
例えば、今年の12/1 までは、100えん。 来年1/1 からは、120円。 といった設定をします。
そのため、条件マスタには「有効期限」を保持しています。
初期設定時は、このようになっていますが、
価格 | 有効開始日 | 有効終了日 | 登録日 | |
100円 | 2020/9/1 | 9999/12/31 | 2020/9/1 |
仮に、2020/12/15に来年1/1からの価格を設定した場合、以下のようになります。
価格 | 有効開始日 | 有効終了日 | 登録日 | |
100円 | 2020/9/1 | 2020/12/31 | 2020/9/1 | |
120円 | 2021/1/1 | 9999/12/31 | 2020/12/15 |
この場合、2020/12/31までは、100円ですが、
2021/1/1からは、120円の価格設定になります。
条件マスタの設定方法については、こちらの記事で解説していますので、気になる方は読んでみてください。
出力マスタ(VV11(受注), VV21(出荷), VV31(請求))
SDの伝票(受注伝票・出荷伝票・請求伝)に出力機能が用意されています。
出力マスタとは、出力のタイミング(即時、時間起動など)、出力方法(印刷、EDI、メールなど)、出力先(外部システム、FAX、プリンターなど)といった制御ができます。
受注・出荷・請求とそれぞれに出力マスタの設定が可能で、トランザクションコードも以下のように分かれています。
- VV11(受注)
- VV21(出荷)
- VV31(請求)
今日学んだこと!
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