SAPでは受注在庫という区分で、受注に紐づけた状態で在庫管理ができます。
この記事では受注在庫とは何か、受注在庫の作り方、受注在庫の管理のされ方について、分かりやすく解説します。
在庫管理の概要
受注在庫の説明をする前に、まずはSAPの在庫管理について少しだけ説明します。
SAPには在庫を管理する組織(場所)・ロット管理有無・在庫ステータスの3点セットで管理します。
- 組織(場所)として、プラント・保管場所を設定
- そこに品目ごとにロット管理をするか・しないか品目マスタの設定
- 各ロットごとに在庫ステータスを管理
受注在庫は、特殊在庫のうちの1つで、受注に紐づきがある場合、受注在庫として管理します。
受注在庫とは
受注在庫とは、受注に紐づけされた在庫のことを言います。
SAP上では、「特殊在庫区分」という項目の値が ”E” というもので受注在庫を表します。
受注在庫は最終製品のみではなく、構成品(部品)にも使用できます。
構成品(部品)を受注在庫管理する場合、受注紐づき製造指図にしか使用できないようになります。
イメージとして受注在庫として在庫を管理する場合、以下のように紐づけした受注伝票に対してしか出荷ができなくなります。
そのため、他の受注伝票に対して出荷したい場合は、受注在庫振替で出荷したい受注伝票に在庫振替をする必要があります。
受注在庫は、受注伝票専用に在庫管理をしたい場合(他の受注に使用したくない場合)に、使用します。
受注在庫と製造指図・出荷伝票
受注在庫を作るには、受注紐づき製造指図に対する指図入庫で作られます。
そして、受注在庫に対して出荷伝票を登録していくプロセスの流れとなります。
受注在庫を使った時の製造指図と出荷伝票の処理の動きが、通常の在庫(汎用在庫)のときと異なってきます。
汎用在庫と受注在庫でどう動きが異なるのか、比較しながら解説していきます。
受注在庫と製造指図
まず「汎用在庫=5 PC」ある状態からスタートするとします。
ここに「受注=10 PC」登録されたとき、
- 受注紐づきなしの製造指図=5 PC
- 受注紐づきありの製造指図=10 PC
受注紐づきがない場合、不足分の在庫数量だけを補うための製造指図が登録されます。
一方で受注紐づきアリの場合、受注のための製造を行うため、受注伝票の数量分の製造指図が登録されます。
そして、製造指図に対して指図入庫したとき、
- 受注紐づきなしは、汎用在庫として計上
- 受注紐づきありは、受注在庫として計上
【ポイント!】
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受注在庫と出荷伝票
続いて受注在庫と出荷伝票の関係について解説します。
ケースは、1つ前の製造指図で受注在庫を計上した後を想定しています。
受注伝票の数量と同じ数量の出荷伝票を登録し、出庫確認をしたとき、
- 汎用在庫の場合、汎用在庫から在庫引き落とし
- 受注在庫の場合、受注在庫から在庫引き落とし
という処理になります。
受注在庫と生産方式
受注在庫は製品のみならず、半製品・原材料も受注在庫として管理できます。
受注在庫管理をすると、必ず紐づいている受注に対してしか使用できなくなってしまうため、クライアントの方針次第です。
とはいえ、クライアントの生産方式によって、BOMのどの段階から受注在庫管理するか、検討のベースにできるので、参考程度に紹介します。
こちらが生産方式一覧です。 どの業務プロセスで受注が入るかを生産方式ごとに表しています。
例えば、見込生産がメインのクライアントの場合、物流プロセスのところで受注が入ることが多いので、受注在庫管理する必要性はなしです。
例えば、受注生産がメインのクライアントの場合、受注を受けてから原材料を発注していくことが多いので、原材料・部品・半製品・製品とすべてを受注在庫管理してもよいかもしれません。
ただし、原材料は他の受注に使用する可能性が多いのであれば、原材料は汎用在庫として管理する という方針でもいいかもしれません。
サマリ
受注在庫管理をすると、受注に約束された在庫として管理できるため、誤って他の受注に対して出荷してしまうことを防げます。
ただし、厳密に管理されるため、他の受注に対して出荷したい場合は、受注在庫振替処理が必要なため、このようなケースが多いクライアントにとっては手間な運用が増えてしまいます。
受注在庫管理するかしないか、SAPの仕組みを説明しつつ、クライアントと方針決めをしていってもらえればと思います。
(参考)特殊在庫区分一覧
受注在庫は、「特殊在庫区分」のうちの1つです。
SAPは他にも特殊在庫区分があり、こちらの記事にまとめています。
他の特殊在庫区分も知りたい方は、こちらの記事を参考に読んでみてください。