代替数量単位とは、基本数量単位とは別に持たせる数量単位のことです。
販売・発注・製造などで、基本数量単位とは別の固有の数量単位を持たせたい場合に使用します。
この記事では、代替数量単位とは何か、代替数量単位の設定方法、代替数量単位ごとの在庫照会方法について解説していきます。
代替数量単位とは
代替数量単位とは、基本数量単位とは別にトランザクション(販売・発注・製造)固有で設定する数量単位のことです。
代替数量単位は、品目マスタで設定します。
代替数量単位の種類
代替数量単位には、以下の種類があります。
名称 | 設定箇所 | 使用ケース |
基本数量単位 | 基本データ1 | 在庫照会、原価計算 |
販売単位 | 販売:販売組織1 | 受注伝票・出荷伝票 |
発注単位 | 購買管理 | 購買依頼伝票・購買発注伝票 |
製造単位 | 作業計画 | 生産品(BOM・製造指図) |
出庫単位 | 作業計画 | 構成品(BOM・製造指図) |
代替数量単位の使用例
続いて、代替数量単位の使用例について紹介していきます。
もし、社内の在庫や原価は「PC(個)」で管理したい。 ただし販売は「CS(ケース)」で販売したい場合、このような設定をします。
- 基本数量単位:PC
- 販売単位:CS
- 換算:15 PC = 1 CS
換算は、1ケースあたり何個入るかを設定します。
これは、社内ではPC単位で管理をしたいが、得意先へはCS単位での販売をしたい場合に、このような設定をします。
上の例では「販売単位」で紹介しましたが、
- 仕入先との発注やり取りに別単位を使用したい場合は、「発注単位」を設定
- 製造の生産品目に別単位を使用したい場合は、「製造単位」を設定
- 製造の構成品目に別単位を使用したい場合は、「出庫単位」を設定
という具合に、代替数量単位の設定を行います。
※必ずしも、すべての代替数量単位を使用しなければいけないわけではなく、使用したい数量単位のみ使用します。
代替数量単位の設定方法
代替数量単位の設定は、品目マスタ登録・変更(T-code:MM01 / MM02)で設定していきます。
設定箇所1(基本数量単位-基本データ1)
まず必須の設定は「基本数量単位」です。 基本データ1ビューにて設定します。
ポイントは、原価計算に使う数量単位ということです。
名称 | 設定箇所 | 使用ケース |
基本数量単位 | 基本データ1 | 在庫照会、原価計算 |
設定箇所2(代替数量単位-各設定ビュー)
続いて代替数量単位は、それぞれ使用する代替数量単位のみ各設定ビューにて設定します。
名称 | 設定箇所 | 使用ケース |
販売単位 | 販売:販売組織1 | 受注伝票・出荷伝票 |
発注単位 | 購買管理 | 購買依頼伝票・購買発注伝票 |
製造単位 | 作業計画 | 生産品(BOM・製造指図) |
出庫単位 | 作業計画 | 構成品(BOM・製造指図) |
設定箇所3(換算係数-追加データ-数量単位)
最後に基本数量単位と代替数量単位の換算係数の設定をします。
画面上部の「追加データ」の「数量単位タブ」にて設定をします。
ここで、15 PC = 1 CS といった具合に、換算係数を設定します。
代替数量単位を複数設定する場合は、設定した数だけ換算係数を設定します。
(販売単位・製造単位と2つ代替数量単位を設定した場合は、換算係数もそれぞれ1つずつ設定します)
代替数量単位の注意点
換算可能な数量単位
KG – G や、L – ML といったような、K(キロ)や M(ミリ)をつけることで、1000倍・1/1000倍 できる数量単位同士であれば、代替数量単位を設定する必要はありません。
例えば、基本数量単位:G、発注単位:KG としなくても、発注伝票上で単位:KG と入力すれば、SAPが自動で換算してる仕様になっています。
上の例でいうと、発注入庫:1 KG すれば、在庫照会では 1000 G 追加された状態になっています。
そのため、代替数量単位には換算係数をあえて指定しなければならない単位の場合のみ、代替数量単位を設定します。
小数点
数量単位に小数点を保持する数量単位の設定には注意が必要です。
SAPの数量単位は、整数部:10桁、小数部:3桁 を持たせられます。
例えば、1 PC(基本数量単位) = 10 KG(発注単位) と換算係数を設定したとします。
【注意点1】
発注時に 0.001 KG としたとき、基本数量が 0.0001 PC(小数4桁)になるため、エラーとなります。
この場合、KG ではなく G を使用することで回避できます。1 PC(基本数量単位) = 10,000 KG(発注単位)
SAP標準で用意されている数量単位で対応できない場合は、会社固有の数量単位を新規追加することで対応します。
【注意点2】
発注入庫を 1 KG としたとき、裏では基本数量 0.1 PC となります。
PC(個)は小数点不可の数量単位ですが、入出庫処理自体は可能です。
SAP処理上の注意点ではないですが、在庫照会をすると 小数点不可の数量単位でも小数点表示になります。
そのため、棚卸や在庫資産確認の際に、小数点表示される旨を関連部署間で共通認識を持たせる必要があります。
※小数点不可の数量単位は、入出庫処理で小数点指定が不可能 ということです。
代替数量単位が小数点可で代替数量単位での入出庫がされると、小数点不可の数量単位側の在庫照会でも小数点表示される ということになります。
代替数量単位の在庫照会方法
SAPでの在庫照会の方法は、主に3つあります。
- T-code:MMBE(在庫状況照会)
- T-code:MB52(保管場所別在庫一覧)
- T-code:BMBC(ロット情報コックピット)
使い方・特色については、こちらの記事で詳しく解説しています。
代替数量単位での在庫照会が可能なトランザクションコードは、こちらです。
T-code | T-code名 | 代替数量単位での在庫照会 |
MMBE | 在庫状況照会 | 可 |
MB52 | 保管場所別在庫一覧 | 不可 |
BMBC | ロット情報コックピット | 可 |
T-code:MMBE(在庫状況照会)
T-code:MMBEでは、画面上部の「数量単位」の値を変更することで、基本数量単位 – 代替数量単位の変換ができます。
デフォルトでは基本数量単位での在庫数量が表示されますが、「数量単位」を代替数量単位に変更すると代替数量単位での在庫数量が表示されます。
T-code:BMBC(ロット情報コックピット)
T-code:BMBC では、基本数量単位・代替数量単位の2レコードで、在庫数量が表示されます。
画面イメージとしてこのようになります。
品目 | ロット | 数量 | 単位 |
A0001 | 1000000001 | 1 | PC |
A0001 | 1000000001 | 10 | KG |
A0001 | 1000000002 | 2 | PC |
A0001 | 1000000002 | 20 | KG |
A0001 | 1000000003 | 3 | PC |
A0001 | 1000000003 | 30 | KG |
2レコードで1ペアとなります。(1レコード目も2レコード目も、品目・ロットというキーは同じ)
- 1レコード目は、基本数量単位での在庫数量
- 2レコード目は、代替数量単位での在庫数量
という表示になります。
慣れるまでは、見慣れないですが、T-code:BMBC(ロット情報コックピット)でも、代替数量単位の在庫照会が可能です。
サマリ
代替数量単位を使うことで、各トランザクション(販売・発注・製造)で基本数量単位とは異なる数量単位の設定が可能です。
運用によっては代替数量単位を使うことで、既存運用をそのまま残した状態で運用移行することが可能です。
ただし、代替数量単位を使う場合、小数点を考慮したうえで設定値の検討や、在庫照会運用のユーザトレーニングが必要です。
この記事を読んで、代替数量単位について少しでも理解が進むと幸いです。