ロットレベルとは、ロットの登録粒度をどのレベルにするかを決めることです。
SAPではコンフィグ(カスタマイズ)で設定できます。
保守やバージョンアッププロジェクトからSAPコンサルを始めた方は、すでにコンフィグがされている状態なので、あまり意識をすることはありません。
しかし、新規導入プロジェクトや複数SAPの統合プロジェクトに参画した場合、まずはロットレベルを決める必要があります。
ロットレベルが決まらないと、在庫管理をどの粒度で行うかが決まらないので、重要な設定になります。
この記事では、ロットレベルとする3つレベルと、それぞれの特徴を解説し、ロット管理方針・在庫管理方針の検討に役に立つ情報を提供します。
3つのロットレベル
SAPのロット登録粒度を決めるのが「ロットレベル」です。
ロットレベルには、次の3つがあります。
- 品目 x プラントレベルで一意
- 品目レベルで一意
- クライアントレベルで一意
言葉から何となくイメージできる方もいらっしゃるかと思いますが、みなさんの認識を合わせるために、それぞれのロット登録粒度のイメージを次に解説していきます。
品目 x プラントレベルで一意
品目 x プラントレベルを選択した場合、品目 x プラントの単位でロット番号が採番されます。
つまり同じ品目でもプラントが異なれば、同じロット番号が存在するということになります。
イメージはこんな感じです。
同じロット:10001でも、プラント1000でも2000でも使われていますし、品目A001でもB001でも使われます。
ロットを特定したい場合は、「プラント x 品目 x ロット番号」の3つの情報を指定してあげる必要があります。
上の例でいうと、次の3つの情報がないと、ロットの有効期限日は特定できません。
- プラント:1000
- 品目:A001
- ロット:10001
→ ロットの有効期限日は、1/30
品目レベルで一意
品目レベルを選択した場合、品目単位でロット番号が採番されます。
イメージはこんな感じです。
同じロット:10001でも、品目A001でもB001でも使われます。
しかし、同じロット:10001で、プラント:1000と2000にあるロットは、同じロットになります。
ロットには、有効期限日の他に仕入先ロット番号やロット特性などの情報を持たせることができます。
これらのロット情報をプラント間転送でロットの移動をさせても、そのまま維持したい場合は、品目レベルを選びます。
品目レベルでロットを特定したい場合は、「品目 x ロット番号」の2つの情報を指定してあげる必要があります。
上の例でいうと、次の2つの情報がないと、ロットの有効期限日は特定できません。
- 品目:A001
- ロット:10001
→ ロットの有効期限日は、1/30
※プラントが異なっても、品目:A001 のロット:10001は同じロットで、有効期限日は1/30です。
クライアントレベルで一意
クライアントレベルを選択した場合、クライアント内で必ず一意のロット番号が採番されます。
イメージはこんな感じです。
ロット:10001と指定すれば、必ずどの品目のロットか特定できます。
ロット:10001が、品目:A001 で使われている場合、他の品目でロット:10001を使うことはできません。
品目レベルと同様に、同じロット番号が複数プラントに存在することは可能です。
例えば、ロット:10001で、プラント:1000と2000にあるロットは同一ロットです。
品目レベルでロットを特定したい場合は、「品目 x ロット番号」の2つの情報を指定してあげる必要があります。
上の例でいうと、ロット番号さえあれば、どの品目のロットか。
- ロット:10001
→ 品目:A001のロットで、有効期限日は、1/30
どのロットレベルを選ぶべき?
SAPのロットレベルには、次の3つがあるとお話してきました。
- 品目 x プラントレベルで一意
- 品目レベルで一意
- クライアントレベルで一意
ロットレベルを決める観点は、2つあります。
- ロット番号の枯渇
- ロット管理粒度
ロット番号の枯渇
ロット番号は、10桁まで持たせることができます。
英数字が使用できますが、仮に数字のみで内部採番(連番)の場合、10億ロットまで登録できます。
10億と聞くと、かなりの数を登録できる印象を受けますが、クライアントレベルにした場合、各プラントで発生する入出庫ごとにロット番号が採番されると考えると、すぐに枯渇してしまう企業もあるでしょう。
そのため、ロットレベルを決める前に、仮にクライアントレベルにした場合、どれくらいの期間で枯渇してしまうかは試算した方が良いでしょう。
枯渇してしまった場合は、アーカイブ対応をする必要があります。
ロット管理粒度
ロット番号の枯渇は、アーカイブで対応できますが、ロット管理粒度は業務運用に関わってくるので、こちらの方がロットレベルを決めるのに重要な観点です。
仮に「品目 x プラントレベル」にした場合、プラント間転送で転送元のロット情報を同じロット番号で引き継げないことが出てきます。
そのため、プラント間転送がある会社は、少なくとも品目レベルにしておかないと、会社全体でロット情報の管理が難しくなります。
ロット番号だけで、品目・ロットを一意に特定したい場合は、「クライアントレベル」
品目 x ロットで一意に特定でも構わない場合は、「品目レベル」
といった選択をするのが良いでしょう。
ロットレベルのコンフィグ方法
ロットレベルのコンフィグは、T-code:SPROから次のパスを辿っていけます。
ロジスティクス – 一般 → ロット管理 → 指定:ロットレベル / 有効化:ステータス
指定:ロットレベル / 有効化:ステータスを選択し、出てきた画面で「ロットレベル」のボタンをクリック
もしくは、T-code:OMCE でも同じ画面にいけます。
ここで、次の3つからロットレベルを選択します。
- ロット:プラントレベルで一意
- ロット:品目レベルで一意
- 品目のクライアントレベルで一意のロット
まとめ:新規導入、SAP統合の際はロットレベルを決めよう
普段はあまり気にしませんが、新規導入、SAP統合の際は、ロットレベルを決めるところから始まります。
ロットレベルが決まらないと、ロット管理方針・在庫管理方針を決めることができません。
ぜひこの記事をロットレベル選択の参考にしてください。