派生ロールとは、ロール間で親子関係を作る機能のことです。
派生ロールを使うことにより、ユーザとへのロール割当が楽になるので、メンテナンス性が向上します。(仕組みについては後ほど解説)
この記事では、派生ロールとはどういう機能なのか、どのように設定するのか、どのようなシーンで使えるのか、ということを解説していきます。
(前提)SAPのロール・権限の考え方
派生ロールとは、SAPの権限ロールのいち機能です。
こちらの記事でSAPロール・権限について解説していますので、初めての方はこちらから読んでみてください。
派生ロールの仕組み
派生ロールとは、ロール間で親子関係を結ぶ機能のことです。
派生されたロール(子)は、派生元のロール(親)の設定をすべて受け継ぐ仕組みになっています。
言葉だけでは分かりづらいと思うので、イメージで説明していきます。
まず、ロール:Z11 に、「T-code:MIGO」で「登録・変更・照会」ができるロールがあったとします。
ロール:Z11 を元に、派生ロールとして、Z21・Z22・Z23 を登録し、それぞれの派生ロールで「組織 プラント」を設定します。
この場合、ロール:Z21・Z22・Z23 は派生元のロール:Z11 の「T-code:MIGO」「登録・変更・照会」を引き継ぎます。
このように派生ロールでは、派生元のロールの設定を引き継ぐことができます。
派生ロールの設定方法
派生ロールは、派生先(子)側のロールに設定をしていきます。
【設定箇所】
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この「派生元ロール」の項目に、派生元(親)側のロール名を入力するだけでOKです。
もし、派生元ロールを変更した場合、権限変更画面から、「権限」→「派生調整」→「派生ロール調整」をクリックすると、派生ロール側にも変更が反映されます。
派生ロールの有効な使い方
派生ロールは、使えるトランザクションコードやACTIVITYは共通化したいが、組織レベルでロールを使い分けたい場合に有用です。
例えば、トランザクションコード・ACTIVITYを、
- 調達(担当者)
- 調達(上長)
- 販売(担当者)
- 販売(上長)
- 経理(担当者)
- 経理(上長)
といったレベルで共通化します。
そして派生ロールとして、
- 調達(担当者):プラント 1000
- 調達(担当者):プラント 1001
- 調達(担当者):プラント 1002
- 調達(上長):プラント 1000
- 調達(上長):プラント 1001
- 調達(上長):プラント 1002
プラントレベル(組織レベル)で、それぞれの派生ロールを登録します。
そして、各対象のプラントのユーザに「派生ロール」側だけを割り当てます。
派生ロールを使って何が嬉しいかというと、上の図の「調達(担当者)」という派生元ロールを共通化できることです。
共通化することにより、メンテナンス性を向上でき、ユーザへのロール割当も派生ロールのみでOKとなります。
サマリ
派生ロールは、派生元ロールを共通化・標準化し、組織レベルで派生ロールを使うことで、メンテナンス性を向上させることができます。
SAPのロール・権限設定では細かいところまで設定できますが、細かくしすぎると組織変更・人事異動時のメンテナンスが大変になります。
粒度が荒すぎてもオペレーションミスのもとになりますが、ある程度標準化しておいた方が組織変更・人事異動時のメンテナンスが楽になります。
権限設計次第ですが、派生ロールを使うことは権限の考えをシンプルにし、ERPを導入する=標準化する に沿ってもいます。
派生ロール自体を知らない方もいらっしゃるので、この記事をとおして、派生ロールのメリットを少しでも理解いただけたら嬉しいです。