品目のMRP4ビューに「打切品」という項目があります。
この記事では「打切品」を使用した時にどのような動きをするか、どのような業務ケースで使えるかを解説します。
使用ケース
生産業務ではBOM(部品表・配合表)を元に製造業務を実施します。
今より性能のよい構成品目が出てくれば、構成品Aから構成品BにBOM変更をします。
車を例にすると、タイヤAよりタイヤBの方が性能がいいので、BOMを変更し、今後の製造ではタイヤBを使う といった具合です。
BOMを変更した後に作られた計画手配・指図の構成品にはタイヤBが使われるようになるのですが、ここで困るのがタイヤAの在庫が残った状態でタイヤBに切り替わってしまうことです。
タイヤAもタイヤBも問題なく走行はできるので、タイヤAの在庫を使い切ったのちにタイヤBを製造に使いたいケースに、打切品・Follow-up品の機能が使えます。

打切品・Follow-up品の2種類の機能
打切品・Follow-up品には次の2種類の機能があります。
- 単純打切(打切区分:1)
- 従属並列打切(打切区分:3)
単純打切(打切区分:1)
単純打切とは、品目Aの在庫がなくなったら品目Bに構成品を切り替えるという機能です。
先ほどのタイヤAからタイヤBに切り替えるケースが単純打切です。
従属並列打切(打切区分:3)
従属並列打切とは、とある品目の在庫がなくなれば、それに引きずられて他の品目もFollow-up品に切り替える機能です。
例えば、ドアL(主品目)の在庫がなくなれば、ドアR(従属品)も別品目に切り替えるというケースで使えます。
ただ実機で検証したり、SAP Noteで調べたりしてみたが、想定どおりに動かず、ネットでも英語記事含め、打切区分:3(従属並列打切)に関する情報がありませんでした。
マスタ設定
(ご了承)
この記事では打切区分:1(単純打切)の設定についてのみ解説していきます。
マスタ設定は品目のみ。
他英語記事ではBOMも設定が必要と書いているものもありますが、品目マスタのみで正しく動作します。
品目
品目マスタのMRP4ビューを開き、以下の3つの項目に値をセットしていきます。
項目名 | 設定値 |
打切区分 | 1:単純打切、3:従属並列打切 |
打切日付 | 打切を開始する日付 |
Follow-up品目 | 切替先の品目コード |
「打切区分」は上の章で説明した単純打切か従属並列打切を指定します。
「打切日付」は指定した日付以降で在庫がなくなったタイミングでFollow-up品に切り替わります。
「Follow-up品目」は切替先の品目コードを指定します。上の例だとタイヤBを指定します。
BOM
他英語記事にはBOMの設定も必要と書いていたが、設定しなくても正しく動きます。
ただどのような設定が必要と書いていたか、備忘がてらに書いておきます。
明細:0010にタイヤA、明細:0020にタイヤBを設定
タイヤA側の打切明細グループに2桁の任意のコードを設定(01とかでOK)
タイヤB側のFollow-upグループにタイヤA側でセットした打切明細グループと同じコードをセット(01をセット)
明細 | 構成品 | 打切明細グループ | Follow-upグループ |
0010 | タイヤA | 01 | |
0020 | タイヤB | 01 |
トランザクション
打切品からFollow-up品に切り替わるには、MRPを実行した結果の計画手配・指図上で打切品・Follow-up品に切り替わります。
MRP(T-code: MD01N)
まずはMRPを実行します。
MRPを実行するため、生産品・打切品・Follow-up品のMRPタイプは、MRPで実行対象となるものを選択しておく必要があります。
つまりMRPタイプ:ND(MRPなし)だと、打切品・Follow-up品の機能が正しく動きません。
計画手配・指図(MD13、CO03、MD04など)
MRPを実行した結果、打切品の在庫がなくなった後の計画手配上ではFollow-up品が紐づいていることが確認できます。
例えば、在庫が切りよくなくならない場合、1つの計画手配に打切品・Follow-up品の両方が紐づくこともあります。
下の図のようにBOM上はタイヤが4つ。
タイヤAの残在庫は1つ。
この場合、タイヤA:1PC、タイヤB:3PC が計画手配の構成品として紐づきます。

打切品の使用時注意点
打切品・Follow-up品を使う上での注意点は2つあります。
マニュアル登録の計画手配・指図には機能しない
打切品からFollow-up品に切り替わるのは、MRPを実行した結果できた計画手配・指図上のみです。
マニュアル登録した計画手配・指図の構成品はBOMから読み取ってくるのみのため、上の例でいうとタイヤAが紐づいてしまいます。
対策としてはBOMを正しい状態に修正するしかありません。
外注BOMには使えない
MRPの結果、外注BOMも展開され、仕入先に必要な支給品数量が算出されます。
ただし外注BOMの場合、MRPを実行した結果だとしても、Follow-up品に切り替わることはありません。
これはSAP Noteでも述べられており、外注BOMは対象外とのことです。
57005(Subcontracting: Discontnd part f requirements of materl provided)
こちらもBOMを正しく修正するしか対応策はありません。
サマリ
打切品・Follow-up品を使った場合、在庫がなくなったタイミングで構成品を切り替えることができる優れたSAP標準の機能です。
BOMを切り替えたタイミングだと、どうしても在庫が残ってしまい、後処理(廃棄など)に困ってしまう業務ケースが出てきます。
打切品・Follow-up品を使えば、そうした課題を解決できるため、どこの製造業でも使えそうな機能だと思います。
ただし、注意点にも書きましたが、マニュアル伝票登録や外注BOMには無効な機能です。
Follow-up品に切り替わった伝票ができたのち、BOMを修正しておく業務運用も検討事項に含めてプロジェクトを進めると良いかなと思います。