マイナス在庫とは、SAP上、在庫をマイナス数値にさせるか・させないかを設定する機能のことです。
この記事では、マイナス在庫の使用ケース・設定方法について解説していきます。
マイナス在庫の使用ケース
マイナス在庫とは、SAP上で在庫数量をマイナスにさせるか・させないかの許可をする機能のことです。
「そもそも在庫って物理的にあるもんなんだから、マイナスになることありえなくない?」
という疑問がでてきますよね。
そうです。 物理的には在庫はあるんです。
しかし、SAP上(データ上)だけはマイナスに “したい・しなければならない” というケースが発生するのです。
具体的な例をいうと、製造で “液体もの” を材料として使うような場合です。
液体の場合、正確にミリリットル単位で計測して材料を投入するという運用ができていない場合、”BOMの理論値” でとりあえず実績計上する運用をすることがあります。
理論値で出庫していると、実在庫と理論在庫(SAP上のデータ)に差が出ます。
ということは、実在庫としてはあるので製造に使うが、理論在庫上(SAPのデータ上)は在庫にないので、そのまま実績計上してしまうと、データ上はマイナスになるケースが発生します。
液体ものを使っている業界や、材料の出庫実績を正確に計上しない会社は、”理論値” で指図出庫をする運用をします。
そのため、実在庫と理論在庫の差が出てしまい、マイナス在庫になってしまうことがあるのです。
これでマイナス在庫になるナゾが少しでもイメージできたでしょうか?
【参考】バックフラッシュ(理論値払出)
※ちなみに理論値で指図出庫する機能をSAPでは「バックフラッシュ」と呼びます。
バックフラッシュについてはこちらの記事で解説しているので、気になる方は読んでみてください。
(参考)こんな使用ケースも。。。
マイナス在庫使用した私の事例ベースでの紹介です。
この会社では生産管理システムを別で持っており、原価管理・在庫管理のために製造実績をSAPに連携する構成でした。
この会社の生産管理システムは、すでに実績計上した工程も、生産分析のためなどで実績修正をする運用をしていました。
そのため、工程Aを実績計上し、すでに次の工程Bの実績計上が終わった後に、工程Aの実績修正をする運用をしていました。
ここで問題なのが、SAPでは指図入庫修正を 10PC → 8PC にするには、一回 10PC の入庫取消をし、8PCの入庫をしなければならない ということです。
つまり、10PC の入庫取消(-10PC)をした時点で、下の図のようにマイナス在庫になってしまいます。
そのため、この会社では理論値払出をしないにも関わらず、生産管理システム側の実績修正が後々実施するという理由で、生産に使うすべての品目にマイナス在庫許可の設定をしました。
マイナス在庫を使用するときの注意点
マイナス在庫を使えば、理論在庫数を気にせず実績計上ができるので、運用からすると「ある意味楽」です。
とはいえ、ずっとマイナス在庫のままでいいわけではありません。
SAPの在庫はFI(会計)につながっていて、在庫資産を見ています。
会社にどれだけの資産があるか、在庫数量から見ているのです。
そのため、会社の物理的な在庫の資産がマイナス状態、というのはありえないことです。
そのため、一生マイナス在庫のままでは会計の観点からNGなのです。
マイナス在庫を正しい在庫数量、もしくはゼロ在庫に修正するのは、会社の運用次第ではありますが、よく行われるのは月次棚卸で在庫数量調整をします。
棚卸時にマイナス在庫になっている品目・ロットをチェックし、在庫があれば正しい数量に修正、在庫がなければゼロ在庫として修正します。
マイナス在庫を許容する要件になった場合、マイナス在庫を修正する運用の検討も合わせてしないといけないことは念頭に置いておいてください。
マイナス在庫の設定方法
それではマイナス在庫の設定方法について、解説していきます。
マイナス在庫は、品目マスタの プラント/保管場所2 ビューにて設定をします。
T-code:MM01(品目マスタ登録) or MM02(品目マスタ変更)で、プラント/保管場所2 ビューを開き、「マイナス在庫」にチェックを入れるのみです。
プラント/保管場所2 ビューはプラントレベルでの設定です。
そのため同じ品目でも、横浜工場プラントではマイナス在庫ON、千葉工場プラントではマイナス在庫OFF ということができます。
(横浜工場では理論値出庫、千葉工場では実際にの使用量を計測し計上する運用をイメージ)
今日学んだこと!
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