SAPの品目設定で、「ファントム組立品」というものがあります。
ファントム組立品を使用すると、BOMのグルーピングができたり、大量の構成品を1つにまとめてメンテナンス性を高めることができます。
この記事では、ファントム組立品とは何か、どういったケースで使用するかを分かりやすく解説します。
ファントム組立品とは
まずファントム(Phantom)は、訳すと「幻・幻影・幽霊」と出てきますが、直訳のままで品目マスタとして登録しますが、在庫管理は一切されません。
在庫管理されない、というところがポイントです。
ファントム組立品の使用イメージ
では、どういったケースでファントム組立品を使うかというと、BOMをグルーピングしたいときに使います。
実際にファントム組立品を使ったBOMのイメージがこちらです。

- ファントム品を構成品に使った、BOM1
- ファントム品を親品目として使った、BOM2
の2つのBOMが登場します。
実際にファントム品を使ったBOMから製造指図を登録すると、以下のようなイメージになります。

ファントム組立品は在庫管理されない、あくまでグルーピングのための品目です。
そのため、製品の製造指図を登録すると、ファントム組立品の配下の品目まで展開され、製造指図の構成品として登録されます。
ファントム組立品の使用ケース
ここまででファントム組立品の使用イメージはついたかと思います。
では、どういったケースでファントム組立品が役立つかの説明をしていきます。
例えば、以下のように製品X・製品Y・製品Z を作るのに、それぞれの半製品と同じ「梱包材もろもろ」を使用していたとします。

この場合、直接 製品X・製品Y・製品Zの構成品として、「梱包材もろもろ」を1品目ずつ設定していっても問題ないのです。
ただし、「梱包材もろもろ」のうち1つでも品目や数量が変わると、製品X・製品Y・製品ZすべてのBOMの修正が発生するので、メンテナンス性がいいとは言えません。
ここで登場するのが、ファントム組立品です。
ファントム組立品の配下に、「梱包材もろもろ」をセットしたBOMを登録しておけば、あとは製品X・製品Y・製品Zの配下にファントム組立品をセットするだけです。

このような形でファントム組立品をBOMのグルーピングとして使用します。
汎用的に使う一式のようなものをファントム組立品として登録しておくと、BOMのメンテナンスが楽になります。
(上の例だと、「梱包材もろもろ」の構成品に修正があっても、ファントム組立品のBOMのみを修正するだけで済むので、メンテナンス性は抜群です。)
ファントム組立品の設定方法
ファントム組立品の設定方法(通常パターン)
ファントム組立品は、品目マスタ-MRP2ビューの「特殊調達タイプ」で設定します。
特殊調達タイプ:50(ファントム組立品)をセットするだけでOKです。
あとは、ファントム組立品を親品目としたBOM、ファントム組立品を構成品としたBOMを登録するのみです。
ファントム組立品の設定方法(特殊パターン)
ファントム組立品をケースによって使い分けたい場合の設定方法を解説します。
例えば、半製品Wを通常は在庫品として扱いたいが、製品Xに使用するときだけファントム組立品として使用したい といった特殊ケースに対する設定方法を説明します。
(※私は設定方法については知ってますが、今までのプロジェクトで使用したことはありません。。)
ケースとしては以下のように、製品Xにはファントムとして設定、製品Yには通常の在庫品目として設定したい場合です。

この場合、設定方法は2パターンあります。
パターン①:半製品Wをファントム品として設定、製品Yの構成品の半製品Wの展開タイプ:02を設定

BOM構成品の展開タイプ:02は、ファントム組立品として見なさない という設定です。
パターン②:半製品Wを通常品目として設定、製品Xの構成品の半製品Wの特殊調達タイプ:50を設定

BOM構成品の特殊調達タイプ:50は、品目マスタと同様でファントム組立品を意味します。
ファントム組立品の原価計算
ここで気になってくるのが、原価計算かと思います。
ファントム組立品が在庫管理しない品目といえど、原価計算は通常の品目と同様に原価積上がされます。
イメージとしては、このようになります。

ファントム組立品の原価は、構成品である原材料A・B・Cの原価を合わせた数になります。
製品の原価は、半製品・加工費・ファントム組立品の原価を合わせた数になります。(ファントム組立品の構成品まで見ずに、ファントム組立品の原価を見る仕様になっています。)
サマリ
ここまででファントム組立品・BOMについて解説してきました。
ファントム組立品は、同じようなBOM構成品を使っている場合、構成品をグルーピングするのに有用な機能です。
どのクライアントでも構成品を一式で扱いたいことは、ケースとして多いので、ぜひファントム組立品を利用して、メンテナンス性を高めてもらえればと思います。
問い合わせ失礼致します。
現在、製造業のアフタービジネスにおけるSAP導入プロジェクトを行っております。プロジェクトが開始して約1年経ちますが、配布される資料はわかりずらく苦戦していたところ、とく様の記事にたどり着き中身を見たら大変わかりやすく感動しております。
大変恐縮ですが2点ほど概念や考え方についてご教示いただくことはできないでしょうか。
例)自動車業界でいうディーラーにSAPを導入するという想定でお話し致します。
①ディーラー側で車検などを行う際のBOMは契約上交換する部品のみを登録しますか?それとも他(追加料金含む)のパーツもBOMに登録しますか?
※この質問の意図は、追加部品が大量に発生した場合に、追加の手間や、品目コードなどはSAP外から読み取る必要が出てきてしまうのでは…という懸念です。
②MTS生産などの生産方式の考え方について、ディーラーでの車検は何に該当する生産方式になりますでしょうか。
大変お手数ですがご回答いただけると幸いです。
たいさん
ご質問ありがとうございます。
SAPとは、S/4HANAのことでしょうか? アフターサービスなのでC/4でしょうか?
アフターサービス(パーツ交換など)なので、私のブログで解説している生産BOMとは少し毛色が変わると思います。
アフターサービスはいわゆるサービスBOM(生産BOMとは違う)を使っているイメージですが合ってますでしょうか?
サービスBOMは同じ品目構成でも、Aさん購入のプリウスと、Bさん購入のプリウスのパーツは、それぞれ別のシリアルナンバーがついているのがサービスBOMです。
なので私の認識を前提に回答すると
①Aさんプリウスを販売したときのBOMから、交換したパーツだけシリアルナンバーが別のモノに変更される(品目構成は同じでシリアルナンバーだけ変更)
②アフターサービスなので、生産形態はない(別の話)かと思います。
とく様
お返事いただきありがとうございます。
アフターなのですがS/4HANAのPPモジュールで業務をカバーしようというのが会社の方針なのですが、新規生産とアフターを同じステージで話を進めているので悩んでました。
BOMについては、新規とは違うBOMになります。車検を例としてお話ししますと、車検時に交換する部品だけ登録したBOMをつくるというのが方針ですが、その他に交換する可能性がある部品が山ほどあって、その部品はBOMには登録しないとします。その場合、追加で発生した部品をいちいち製造指図に追加するなどの作業や作業手順も色々あるので登録するなどの業務が想定されます。
色々悩んでますが、今回いただいた内容で少しすっきりした部分もあります!ありがとうございました。ちょっと方向転換も考えなくてはと思いました。
たいさん
状況理解できました!
生産形態の話で言うと、見込生産でも受注生産でもないです。
PPの指図を使って、車検する担当者へ指示を出したいために、PPを使ってるイメージですかね。
製造指図は、BOMを元に作られます。
そのため、すべての可能性のある部品をBOMに登録しておくと、今回の車検では使用しない部品まで製造指図に登録されます。
おそらくですが車の標準モデルのパーツだけBOMに登録しておき、車検時のオプションとなるパーツは、都度製造指図に登録する運用にしてるのかな、と思いました。