この記事では、製造指図と製造原価の関係について解説します。(※5分で読めます。)
SAPのPP(生産)・CO(原価)モジュールを使用することで、製造の実績が原価として積みあがって、実際原価(生産でどれだけコストがかかったか)を分析することができます。
なかなか実際原価まで集計し分析できる会社は少ないですが、SAPを使用することで実際原価分析ができることがSAPを導入するメリットの1つです。
今回は、実際原価の大元の考えとなる、製造指図と製造原価の関係について解説します。
Contents
製造指図と標準原価
製造指図とは、製造の予定のことです。
製造指図には、
- 入庫予定:生産する中間品・製品の数量
- 出庫予定:使用する材料の数量
- 作業予定:生産にかかる予定の時間・工数
の3つの情報が含まれています。
入庫予定・出庫予定は、BOMマスタから、
作業予定は、作業手順マスタから 製造指図に読み込まれます。
製造指図と標準原価のイメージは、このようになります。
標準原価の仕訳上は、
(標準原価) 加工費 + 材料費 = 製品出来高
となります。
製造実績と実際原価
では製造実績が計上されてからの場合を見ていきましょう。
もし製造実績が製造指図(予定)に比べ、以下のような実績が入った場合、このような実際原価のイメージになります。
- ◆作業時間(切断):3.0H 予定 → 3.5H 実績(0.5H 多く作業時間がかかった)
- ◆出庫(原材料B):15KG 予定 → 17KG 実績(2KG 多く材料を使用してしまった)
- ◆出庫(原材料C):30PC 予定 → 35PC 実績(5PC 多く材料を使用してしまった)
- ◆入庫(中間品A):45PC 予定 → 45PC 実績
製造指図(予定)に比べ、製造実績で差が出てしまうことがあります。
このような製造の予定と実績の差が、原価差額として仕訳上、出てきます。
上の図では、作業時間・出庫実績で予定よりも多くかかってしまった場合を表しているため、原価差額が貸方(仕訳の右側)に出ています。
もし作業時間・出庫実績で予定よりも少なかったり、入庫実績が予定よりも多い場合は、原価差額が借方(仕訳の左側)に出ます。
原価分析は、
- 原価差額が貸方(仕訳の右側)に出る場合:生産効率・原価効率が悪い
- 原価差額が借方(仕訳の左側)に出る場合:生産効率・原価効率が良い
と分析をします。
サマリ
製造指図(予定)は標準原価となること、製造実績は実際原価となることを説明し、予定と実績の差が原価差額となり、原価分析に使用する大元のデータとなることを説明しました。
最終的に原価分析をし、会社にとって生産効率・原価効率・利益率のよい製品は何かを分析し、経営判断に使用することが目的ですが、その大元のデータ諸元となるのが、製造指図・製造実績です。
入庫・出庫・作業時間を正確に計上することが原価分析の精度を高めることにつながります。
原価分析は、製造現場の方たちにとって直接的に関係のない話で、運用上、正確に計上する必要もない話である会社がほとんどかと思います。
しかし、SAPを導入し、PP・COモジュールをフル活用し、原価分析をすることで経営判断をスピーディに行うことが目的なのであれば、製造現場の方たちを巻き込み入庫・出庫・作業時間を正確に計上いただくことが必須です。
なぜ正確に計上しなければならないのか、正確に計上することで製造現場の方たちにとってどんなメリットがあるのかを伝えつつ、プロジェクトを進めることがキーとなってきます。
(ちなみに私は、製造指図(予定)と製造実績(入庫・出庫・作業時間)、原価分析の概要を押さえたのちに、予実が生産分析にも使えること、原価視点での分析が正しい経営判断につながり、会社の業績が向上、最終的には皆さんのボーナスに返ってくる という説明をしています。)
いかに製造現場の方たちをプロジェクトに巻き込めるかはコンサルの腕の見せどころなので、なぜ実績を正確に計上しなければならないのかの概要説明に、この記事を参考にしていただければと思います。