製造バージョンとは、BOMマスタと作業手順マスタの組合せ情報を設定するマスタです。
この記事では、製造バージョンの設定方法について解説していきます。
Contents
製造バージョンとは
製造バージョンとは、BOMと作業手順の組み合わせ情報を設定します。
そのため製品を生産するためのBOM(構成品情報)と作業手順(作業情報)の事前設定が必要です。
通常は、1つの組み合わせでよいのですが、会社によってはケースによって複数のBOMを使い分けたい・複数の作業手順を使い分けたいという要件があります。
例えば、季節変動で構成品の数量を夏と冬と春秋で使い分けたい場合、1つの製品に対して3つのBOMを保持することになります。(複数BOMは、BOMマスタの「代替BOM」で識別します)
作業手順も同様で、ロット単位によって作業時間を使い分けたい場合、1つの製品に対して複数の作業手順を保持することになります。(複数作業手順は、作業手順マスタの「グループカウンタ」で識別します)
製造バージョンでは、複数BOM・複数作業手順のそれぞれの組み合わせ上方をセットしていきます。
BOM1つ・作業手順1つでも、製造バージョンの設定は必須です。(S/4 HANAから設定必須になりました。)
製造バージョン設定の前提マスタ
製造バージョンを設定する前提として、BOMマスタ・作業手順マスタの設定が必要です。

製造バージョンは、BOM・作業手順の組合せの設定のため、生産品目が共通のBOM・作業手順を予め設定しておく必要があります。
製造バージョン登録(T-code:C223)
製造バージョンは、T-code:C223 で登録します。
ヘッダ
ヘッダでは、キー項目である以下項目を指定して、登録していきます。
項目名 | 意味 |
品目 | 生産品目の品目コード |
プラント | 生産するプラント |
明細
明細では、BOM・作業手順の組合せを設定していきます。
※BOM・作業手順が1つずつの場合は、1明細でOKです。(1明細の場合も設定は必須)
品目
ヘッダと同じ品目(生産品目)を指定
製造バージョン
製造バージョン番号(4桁)を指定。
番号が小さいものがデフォルトになるため、製造指図で一番使うものを”0001″にしておくと便利。
有効期限日(開始・終了)
製造バージョンの有効開始日・有効終了日を指定。
ロットサイズ(From・To)
ロットサイズのFrom Toを指定。
事例として、ロットサイズごとに製造バージョン(BOM・作業手順の組合せ)を使い分ける運用もあります。
タスクリストタイプ
作業手順のタスクリストタイプを指定します。
PPで使用するタスクリストタイプは、以下2つのどちらかです。
- 作業手順の場合:N
- レート作業手順の場合:R
プロセス生産でレート作業手順を使用する場合は、Rを使用します。
グループ
作業手順マスタ登録時に採番されるグループを指定
グループカウンタ
作業手順マスタのグループカウンタを指定。
複数作業手順を保持する場合は、対象のグループカウンタを指定することが重要です。
代替BOM
BOMマスタの代替BOMを指定。
複数BOMを保持する場合は、対象の代替BOMを指定することが重要です。
BOM用途
BOM用途には、以下のコードを指定できます。
- 1:生産BOM
- 2:設計BOM
- 3:一般
- 4:プラント保全BOM
- 5:受注BOM
- 6:原価BOM
通常、PPモジュールを使用する場合には、1:生産BOMを指定します。
チェック処理
入力が完了すると、「チェック」ボタンをクリックします。
チェック処理では、BOM情報・作業手順情報に不整合がないかのチェックをします。
チェック処理ができると、ステータスが緑色になります。
製造バージョン変更・照会(T-code:C223)
製造バージョンの変更・照会は、登録と同じT-code:C223 で実行します。
キー項目である、品目・プラント を指定してします。
製造バージョン変更後も、チェック処理は必須です。
デフォルト製造バージョン
複数製造バージョン設定する場合、条件に合う製造バージョンの中で一番製造バージョンの番号が小さいものがデフォルトになります。
条件とは、ロットサイズや有効期限のことです。
生産計画・製造指図・原価計算に、どの製造バージョンがデフォルトで使用されるかが決まるので、ユーザと検討の上、製造バージョンの設定が必要になってきます。
(参考)PPマスタ解説記事
PP(生産モジュール)で使用されるマスタをこちらの記事で解説しています。
各マスタの意味や、マスタ同士の紐づきについて解説しています。
製造バージョンも、他のPPマスタの設定があって効いてくるので、こちらも参考に読んでみてください。
サマリ
ここまで製造バージョンの設定について解説してきました。
製造バージョンにて、BOM・作業手順の組合せを設定します。
S/4 HANA からは、製造バージョンの設定が必須になりました。
BOM・作業手順の組合せが1つしかない場合も、設定が必要です。
また、複数製造バージョンを設定する場合、どの製造バージョンをデフォルトにするか、検討が必要なため、ユーザに説明の上、設定していくことをおすすめします。