MM(購買モジュール)の機能に「見積依頼(RFQ)」というものがあります。
※RFQ = Request For Quotation
見積依頼とは、品目を購入する前に、各社仕入先に「見積依頼」を出し、各仕入先から「見積」を受領し、価格比較をしたのちに、発注する仕入先を決定する業務です。
SAPでは見積依頼をシステム上で管理する機能があります。
この記事では「見積依頼」を使用してどのような業務プロセスフローが流れるのか、どのようなトランザクションコードを使用するのかを解説します。
プロセスフロー
業務プロセスフローは以下の流れで進みます。
- 見積依頼登録(ME41)
- 見積受領・見積依頼更新(ME47)
- 価格比較(ME49)
また、T-code: ME4Mで品目別に参照可能なレポートがあります。
見積依頼登録(ME41)
見積依頼はT-code: ME41で登録します。
ME41の初期画面では以下の項目を入力します。
項目 | 入力内容 |
見積依頼タイプ | SAP標準を使用するのであれば「AN」 |
見積提出期限 | 仕入先から見積を受領する予定日 |
購買組織 | 見積依頼をかける購買組織 |
購買グループ | 見積依頼をかける購買グループ |
ME41のその後、以下の項目を入力し、保存します。
画面 | 項目 | 入力内容 |
ヘッダ | 一括番号 | 複数社に見積依頼を出すため、この項目を使ってグルーピングに使用 |
ヘッダ | 目標額 | 予算など、自社側から提示必要であれば入力 |
明細 | 品目 | 見積依頼を取る品目 |
明細 | 数量 | 見積価格を出していただく数量 |
明細 | 納入日付 | 自社側から提示する納入予定日 |
仕入先住所 | 仕入先 | 見積依頼を出す仕入先 |
項目は購買発注とほぼ同じです。
見積依頼固有の項目は「一括番号」です。
見積依頼は各仕入先ごとに伝票番号が登録されるため、どの見積依頼伝票番号たちが比較対象なのか分からなくなります。
そこで使用するのが一括番号です。
下の図が例です。仕入先:A、B、Cに品目:Xの見積依頼伝票を登録した時、伝票番号が「6000000001 ~ 3」の3つに分かれます。
このときに各見積依頼伝票の「一括番号」に例えば、A0001を入れることでこの3つの見積依頼が比較対象の伝票であることが判別できます。
一括番号を入力しておくことにより、後続プロセスの見積依頼更新や価格比較で検索しやすくする狙いがあります。
一括番号には見積を取るプロジェクトの番号や品目+日付など、自社で分かりやすいコード体系を検討しておくのも1つだと思います。
見積受領・見積依頼更新(ME47)
見積依頼を出した仕入先から見積の回答が返ってきたら、見積依頼の更新をします。
まずはT-code: ME47で登録しておいた見積依頼を検索。
このときに「一括番号」をキーに検索をかけるのがおすすめ。
検索でヒットした見積依頼に対し、仕入先から提示された金額を入力し、保存します。
価格比較(ME49)
続いて、価格比較です。
T-code: ME49にて比較をする見積依頼を一覧で表示します。
ここにおいても「一括番号」をキーに見積依頼一覧を出すのが、業務観点でも使用しやすいかなと思います。
T-code: ME49では事前にME47で入力しておいた見積金額の比較ができます。
ただ単に1,000円 / PC のような見積金額の比較であれば、システム上で比較するまでもないです。
しかし値引きなどの条件が入っているケースでは、SAPが見積依頼数量に基づき、どの見積価格が一番安いかを算出し、一番安い金額を提示した仕入先が分かるように表示してくれます。
品目別一覧レポート(ME4M)
見積依頼を一覧で見たい場合は、T-code: ME4Mを使いましょう。
見積依頼の機能が日本企業にマッチするのか
ここまで見積依頼伝票を使った業務プロセス・トランザクションコードを紹介してきましたが、実際に日本の企業でSAPの見積依頼を使っている企業は多くありません。
理由は各社さまざまですが、以下のようなものがあげられます。
- 個社購買が多い(復社購買が少ない)
- オフラインで管理可能
- システムで管理するのがめんどくさい
私自身も見積依頼を使っているプロジェクトに未だ出会ったことがありません。
しかし最近、SAP AribaのAribaネットワークを使って、仕入先から見積金額回答を直接入力してもらうケースがちらほらあると耳にします。
Aribaネットワークとは、自社のAribaを仕入先にも使ってもらって、1システムの中で購買業務を完結させられるような仕組みを持っています。
Aribaは間接材購入に特化したシステムであるため、自社のすべての購買品をカバーできるわけではないですが、調達部門の負荷を少しでも和らげることが期待できそうです。
サマリ
ここまで見積依頼機能についてまとめてきましたが、実際に私は見積依頼を使ったプロジェクトに出会ったことがありません。
ただ、「SAPに見積依頼の機能がある」ということを知っているだけでも、今後クライアントが見積をシステム上で管理したいという要望・要件に出会ったときに、SAP標準機能で提案できるということは、SAPコンサルとして腕の振るいどころですので、知っておいて損はないかなと思います。
将来のために、この記事が少しでも皆さん(+私の備忘)の役に立てればと思います。