【SAP】作業区マスタ設定方法について徹底解説!

【SAP】作業区マスタ設定方法について徹底解説!

作業区マスタとは、生産品目を製造するのに、どんな作業にいくら作業時間がかかるか といった作業情報を持たせたマスタです。

この記事では、作業区マスタの設定方法について解説していきます。

作業区マスタとは

作業区マスタは、作業場所や製造機器をマスタとしてセットします。

作業区マスタでは、次のことを設定していきます。

  1. 能力計画の元情報
  2. 作業時間実績計上の元情報
  3. 製造原価計算の元情報

 

作業区マスタ設定の前提マスタ

作業区マスタを設定する前提のマスタ設定はありません。

作業区マスタは、作業手順マスタに使用されるので、作業手順マスタにどう使うかをイメージしながら設定粒度を決めていくのがベターです。

PPマスタ_作業区

 

作業区マスタ登録(T-code:CR01)

それでは作業区マスタ登録について、項目レベルで解説していきます。(画面ごとに区切って解説を入れていきます。)

トップ画面

トップ画面では、キー項目である以下項目を指定して、登録画面に入ってきます。

項目名 意味
プラント 生産するプラント
作業区 作業区コード

作業区コードは、登録画面で決定します。

作業区コードは、8桁です。

コード体系は自由のため、プロジェクトでコード体系を事前に決めておくことがベターです。

 

一般データタブ

用途

製造、品質検査、プラント保全など、作業として使用可能な用途を指定します。

制御不要であれば、”009″(全タスクリスト)を指定でOKです。

 

バックフラッシュ

バックフラッシュとは、構成品目の理論値払出機能のことです。

作業区単位でバックフラッシュ有無の制御が可能です。

バックフラッシュ:ONにする場合は、チェックを入れます。

バックフラッシュについては、こちらの記事で解説していますので、読んでみてください。

 

標準値キー

標準値キーとは、作業時間計上項目のグルーピング値のことです。

標準値キーは予めコンフィグで設定しておきます。

例えば、SAP標準で用意されている標準値キーには、段取時間・処理時間・片付時間 の3項目をまとめた標準値キーがあります。

「原価計算タブ」のところで詳しく解説しますが、標準値キー(作業時間計上項目)は加工費計算のために使われます。

加工費をどういった作業時間項目単位で算出したいかに寄るため、経理部門・生産部門合同で、標準値キーを決定していく必要があります。

 

標準値概要

各作業時間計上項目の入力必須チェックをいれるかの制御が可能です。

初期値は「チェックなし」になっているので、作業時間計上時にBlank(0時間)でもOKの場合は、そのままにします。

 

初期値タブ

作業手順初期値

値を設定しておくことで、作業手順マスタの設定値に初期値を提案することができます。

設定しておくことで、作業手順マスタのメンテナンス性が上がります。

 

標準値単位

標準値(作業時間計上項目)の時間単位をセットします。

設定値は、H(時間)やMIN(分)をセットします。

 

能力データタブ

能力データタブは、能力計算をSAPで実施する場合に設定します。

能力データタブの設定は、能力計算の「利用可能能力」の大元の設定になります。

 

能力カテゴリ

機械・人などの能力カテゴリを選択します。

 

利用可能能力 計算式

作業区の利用可能な能力の計算式をセットします。

計算式自体は、予めコンフィグで設定しておきます。

 

以下は、画面下部の「能力」ボタンをクリックした後の画面から設定していきます。

カレンダー

カレンダーID を指定します。

カレンダー自体は、予めコンフィグで設定しておきます。

カレンダーとは、いつ労働日・いつ休日を設定しているモノです。

会社により・国により労働日・休日は異なるので、顧客ごとにオリジナルカレンダーをコンフィグで設定しておきます。

 

開始時間・終了時間

1日の稼働開始時間と終了時間をセットします。

例えば、9:00-18:00

 

休憩時間

休憩の時間をセットします。

例えば、1:00(1時間休憩)

 

能力利用度

1日のうち、この作業区の稼働率をセットします。

例えば、1日のうち5%は停止・メンテナンス時間がある場合、95%とセットします。

 

個別能力数

製造機械数をセットします。

例えば、1作業区に3つの製造機械がある場合、3とセットします。

これは3並列で作業が可能なことを示します。

 

開始時間・終了時間・休憩時間・能力利用度・個別能力数を持って、この作業区の1日の利用可能能力時間を計算します。

以下の設定値を入力した場合の利用可能能力は、

  • 開始時間・・・”9:00″
  • 終了時間・・・”18:00″
  • 休憩時間・・・”1:00″
  • 能力利用度・・・”90%”
  • 個別能力数・・・”3″

→ (終了時間 – 開始時間 – 休憩時間) x 能力利用度 x 個別能力数

21.6 時間

となります。

 

能力計算については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。

 

日程計画データタブ

日程計画データタブは、能力計算をSAPで実施する場合に設定します。

日程計画データタブの設定は、能力計算の「能力所要量」の大元の設定になります。

 

能力カテゴリ

機械・人などの能力カテゴリを選択します。

 

能力計算式

日程計画をするための作業時間を計算する計算式をセットします。

計算式は予めコンフィグで設定しておきます。

SAP標準で用意されている計算式でいうと例えば、

(作業数量 x 作業時間)/ 基本数量

  • 作業数量:製造指図のヘッダ品目生産数量
  • 作業時間:作業手順マスタの作業時間(どの標準値項目かは、計算式に依存)
  • 基本数量:作業手順マスタの基本数量

 

例えば、値が以下の場合、能力所要量は、

  • 作業数量・・・”150 PC”
  • 作業時間・・・”1.0 H”
  • 基本数量・・・”100 PC”

→ (作業数量 x 作業時間)/ 基本数量

1.5 時間

となります。

 

原価計算タブ

原価センタ

作業実績は加工費として計上されます。

この加工費を計上する部門(原価センタ)をここで指定します。

例えば、この作業区が製造1課に属しているのであれば、製造1課の原価センタを割り当てます。

 

活動概要

標準値と活動タイプを紐づけ および 加工費の計算式をセットします。

活動タイプの裏に原価要素(費用計上科目)が紐づいています。

イメージとして以下のようになります。

標準値・活動タイプ・原価要素_紐づき

機械時間に対して減価償却費、人時間に対して人件費 という原価要素が紐づけられるイメージです。

(これはあくまで例なので、どういった紐づきをさせるかはCO担当と要相談です。)

 

作業区マスタ変更(T-code:CR02)

キー項目である、プラント・作業区 を指定してします。

変更は、当初設定値を修正します。

 

作業区マスタ照会(T-code:CR03)

キー項目である、プラント・作業区 を指定し、作業区マスタ情報の照会をします。

 

(参考)PPマスタ解説記事

PP(生産モジュール)で使用されるマスタをこちらの記事で解説しています。

各マスタの意味や、マスタ同士の紐づきについて解説しています。

作業区マスタも、他のPPマスタの設定があって効いてくるので、こちらも参考に読んでみてください。

 

サマリ

ここまで作業区マスタの設定について解説してきました。

作業区マスタでは、能力計画・作業時間実績・原価計算の元情報を設定します。

PPモジュールは、マスタ設定でトランザクションの動きがすべて決まってくるので、この記事をとおして各項目の仕様を少しでも理解いただければと思います。

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TK
製造業界、素材産業にて、SAP ERPの導入・保守を経験。会社の情報システム部門→外資系コンサル会社→育休→独立(フリーランス)。 SAP導入プロジェクトの仕事をする傍ら、SAPに関する情報をブログで発信。