債務管理では、仕入先への出金データなどをすべて管理します。
債務は、SAP FIのFI-APサブモジュールにあたり、債務=AP(Accounts Payable)の略です。
債務プロセスは、調達プロセス(MM)の請求書照合処理と密接な関連があります。
基本的には、MMの請求書照合→FIの出金 というプロセスが一般的です。
この記事では、調達から債務までのプロセス、モジュール間の処理の流れが分かるように、解説していきます。
まずは基本パターンの解説をしますので、FIが初めての人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
債務(AP)とは
「債務」とは、簡単に言うとお金を支払う義務のことです。
モノやサービスをもらった代わりに、お金の支払いをします。
SAPでは、モノ・サービスの仕入先からの調達により、仕入先へお金を支払う義務(債務)が発生します。
仕入先からの調達を起点に、債務プロセスが始まるため、債務プロセスはMMモジュールとの関係が深いんです。
債務と混同しやすいのが、「債権」です。(債権=AR(Accounts Receivable))
債権は、お金を受け取る権利です。
債権は、債務と逆で、モノ・サービスを販売した代わりに、得意先からお金をもらう必要があるので、SDモジュール(販売)と関係が深いです。
こちらの記事で「債権プロセス」について解説しています。
債務プロセス
それではSAPの債務プロセスが、どのように進んでいくかお話していきます。
発注→入庫→請求書照合→出金
SAPの債務プロセスは、基本的に調達プロセスから始まります。
図にすると以下のようになります。(図の下に仕訳イメージも書いているので、そこも意識して見てみてください)
発注→入庫→請求書照合→出金 というプロセスで進みます。
その中でも、発注入庫→請求書照合→消込転記 で、会計伝票が登録されます。
それぞれ、どういう会計伝票・会計仕訳になるか、解説していきます。
発注入庫
発注入庫では、仕入先からの発注品を自社在庫として入庫します。
つまり自社在庫が増える(自社資産が増える)ので、このような会計仕訳が自動で登録されます
原材料が増えて、入庫請求仮勘定がたちます。
請求書照合
仕入先から請求書が届き、請求書の内容(金額)が正しいか確認します。
請求書をもらっても、いきなりお金を支払うわけではないので、いったん「買掛金」という形で計上します。
請求書照合伝票を登録すると、このような会計仕訳が自動で登録されます。
買掛金を計上することにより、入庫請求仮勘定が消込まれます。
イメージとしては、こんな感じです。
原材料/入庫請求仮勘定
入庫請求仮勘定/買掛金
出金
調達部門で請求書の金額に問題ないことが確認できたら、仕入先へお金の支払い処理(出金)をします。
このとき、請求書照合処理で計上した買掛金を消込む必要があります。
そのため、T-code:FB05(消込転記) で実行します。
消込転記をする前に、T-code:FBL1N(仕入先明細照会)で、対象の仕入先を確認します。
例えば、現金で仕訳を計上すると、このような会計仕訳の会計伝票が登録されます。
消込転記のイメージは、こんな感じです。
原材料/買掛金
買掛金/現金
債務プロセス(マニュアル)
マニュアルは、手動で債務の会計伝票を登録することです。
MMモジュールを通さず、出金処理などがあった場合などに使用します。
プロセスは、以下の2ステップで進みます。
ポイントは、T-code:FV60(仕入先請求書伝票登録)です。
いきなり債務の会計伝票が登録できるトランザクションなので、運用などで承認プロセスを通すこともあります。
(誰も知らないところで、会社のお金が減っていたら困りますもんね)
会計伝票のステータス
承認プロセスを設けるために重要なのが、会計伝票のステータスです。
SAPには3つの会計伝票のステータスがあります。
- 保留
- 未転記
- 転記
それぞれ、どのような意味があるかというと、
- 保留は、担当者が入力しただけの状態
- 未転記は、担当者が入力完了し、承認者にチェックをもらえるた状態
- 転記は、承認者がチェックをし、総勘定元帳に記録された状態
会計伝票登録には、この会計伝票ステータスを頭に入れたうえで、承認プロセスを考える必要があります。
権限制御に使えるトランザクションコードの考え方
【保留・未転記(担当者向け)】
いきなり会計伝票転記ができるトランザクションコードは、Vシリーズだと覚えてください。
- T-code:FV60(仕入先請求書入力)
ここでは、入力する伝票タイプによって、トランザクションコードを分けます。
- T-code:FBV1(未転記伝票登録)
- T-code:FBV2(未転記伝票変更)
伝票タイプ問わず、すべての会計伝票の保留・未転記ができます。
【転記(承認者向け)】
いきなり会計伝票転記ができるトランザクションコードは、Bシリーズだと覚えてください。
- T-code:FB60(仕入先請求書入力)
ここでは、入力する伝票タイプによって、トランザクションコードを分けます。
- T-code:FB01(転記伝票登録)
- T-code:FB02(転記伝票変更)
- T-code:FB05(消込転記)
- T-code:FB08(伝票反対仕訳(取消))
伝票タイプ問わず、すべての会計伝票の保留・未転記ができます。
これらのトランザクションコードを、適切なユーザに割り当てて、業務プロセスフローを検討することで、監査上、問題のない業務ができるようになります。
参考:債務レポート
債務レポートには、以下の2種類があります。
- T-code:FBL1N(仕入先明細照会)
- T-code:S_ALR_87012082(国内通貨仕入先残高)
T-code:FBL1N(仕入先明細照会)
選択画面で、
- 仕入先
- 会社コード
- 日付情報
- など
を入力し、実行すると、対象の会計伝票が一覧で出てきます。
一覧では、
- 仕入先
- 伝票番号
- 伝票タイプ
- 伝票日付
- 金額
といった情報が参照できます。
T-code:FBL1N(仕入先明細照会)では、会計伝票単位の情報が見れることが特徴です。
T-code:S_ALR_87012082(国内通貨仕入先残高)
選択画面で、
- 仕入先
- 会社コード
- 会計年度
- 会計期間
- 出力コントロール(オプション)
- など
を入力し、実行すると、対象の会計伝票が一覧で出てきます。
一覧では、
- 会社コード
- 仕入先
- 通貨
- 会計残高
- など
といった情報が参照できます。
T-code:S_ALR_87012082(国内通貨仕入先残高)では、仕入先単位の残高が見れることが特徴です。
(会計伝票単位では見れません)
まとめ:債務プロセスの基本パターンは請求書照合→出金
債務プロセスの基本パターンは、MMモジュールの請求書照合から、FIモジュールでの出金(消込転記)です。
債務プロセスには、他にも
- 前払金
- 相殺
といったプロセスがあります。
しかし、どのプロセスも基本的には、請求書照合→出金のプロセスに基づきます。
まずはこの記事で、債務プロセスの基本パターンを理解してもらえれば幸いです。