最終製品がどの品目・ロットが使われて製造されたのか、原材料ロットがどの品目・ロットを製造するのに使われたのか、品質管理の面からトレースが必要なケースがあります。
SAPでは標準機能でロットトレースの照会ができます。
この記事では、ロットトレース画面の見方、使い方を解説します。
ロットトレースとは
ロットトレースとは、製品を作るのにどのロットを使ったのか といったロットの紐づきの機能のことです。
ロットトレースができることにより、顧客に販売した製品ロットが、どの半製品ロット・原材料ロットを使用して作られたのかを追うことができ、リコール対応がしやすくなります。
また、ロットトレースにはトップダウン型とボトムアップ型の2パターンがあります。
トップダウン型では、製品→半製品→原材料と、最終製品を起点にどの半製品ロットが使われたか、どの原材料ロットが使われたかをトレースができます。

ボトムアップ型では、原材料→半製品→製品と、原材料を起点にどの半製品ロットに使われたか、どの製品に使われたかをトレースできます。

- 製品に問題が発覚したときには、トップダウン型
- 原材料に問題が発覚したときには、ボトムアップ型
を使います。
ロットトレース(T-code:MB56)
SAPでは、T-code:MB56 にてロットトレースが照会できます。
選択画面にて、
- プラント
- 品目
- ロット
- トップダウン or ボトムアップ
を選択し、実行するとロットトレース照会画面に遷移します。
SAPでは品目・ロットが紐づくのは、主に発注入庫・製造指図出庫/入庫・製品出荷など、伝票がキーとなります。
T-code:MB56でも、
-
- どの購買発注伝票で入庫されたものなのか
- どの製造指図で使われたものなのか
- どの製造指図で生産されたものなのか
- どの出荷伝票で出庫されたものなのか
ということが照会できます。
【MB56画面イメージ】

品目・ロット・伝票番号・数量に加え、ロット特性などロットにかかる情報も合わせて照会できます。
(Tips)ロットトレース精度アップのための運用検討
T-code:MB56のところでも解説したとおり、SAPでは「伝票」がキーとなりロットの紐づけが行われます。
その中でもロットトレースの精度を上げるために重要なのが「製造指図」です。
※購買発注や出荷は、ロットトレースの最初と最後なので、品目・ロットの紐づきが行われないため。
理由として製造指図に対して、”複数ロット指図出庫”や”複数ロット指図入庫”ということが可能です。
イメージとしては、以下のような感じです。

例えば、製品 A0001 のロット:10005 を出荷した得意先からクレームが入ったとき、半製品 B0001 のどのロットに原因があったのか分からず、3ロットとも調査が必要になります。

また、製品 A0001 のロット:10009 に半製品 B0001 のどのロットを使用したかも不明なため、リコール対象かどうか判別できないため、リコールせざるを得ない状況になります。

製造指図に対して、複数ロット出庫・複数ロット入庫をした場合、ロットトレースの精度が悪いことを理解いただけたかと思います。
ロットトレースをするうえで、1ロット出庫・1ロット入庫がベスト なのですが、とはいえ運用上できないケースは多々あります。
SAPを導入するうえで、どこまでロットトレースを実現したく、どこまで製造実績計上の運用が可能かを加味したうえで、検討をしていく必要があります。
サマリ
生産・販売・品質管理の業務メンバーは、どのロットからどのロットが作られたのか・どのロットが得意先に出荷されたのか、生産分析・品質管理の面からロットトレースができるかどうか、気にされるクライアントが多いです。
SAP標準でロットトレースができるため、ぜひともこの記事を読んで、ロットトレースについてクライアントに説明いただければと思います。
その際に、ロットの出庫・入庫の粒度がロットトレースを精緻にできるかのキーとなります。
こちらも合わせて説明し、運用検討の役に立てていただければと思います。
(参考)ロットマスタ
こちらの記事でロットマスタ(ロットの保持項目・情報)についての解説をしています。
ロット管理の上で、重要なポイントのため、ぜひとも読んでみてください。