この記事では、
- MPS・MRPって何?
- どういうロジックで計算されるの?
ということをやさしく解説します。
MPS・MRPは、SAPのPP-DS(生産計画)モジュールの根幹となる機能です。
この記事を読むことで、少しでも理解が進むとうれしいです。
MPS・MRPとは
MPS・MRPとは、必要な生産数量・購買数量を、いつ必要なのか、算出することです。
- MPSとは、Master Production Schedule の略で、「半製品」のための言葉。つまり、最終的に製造指図につながります。
- MRPとは、Material Requirement Planning の略で、「原材料」のための言葉。 つまり、最終的に購買依頼につながります。
必要な数量が製造指図・購買依頼の予定情報として「計画手配」という伝票に登録されます。
MPS・MRPの構成展開
通常、製品はBOMマスタで構成品目が連なっています。
例えば、カレーを例にすると、以下のようなBOMマスタとなります。
そのため、上位の品目の所要量から、下位の品目の従属所要量として展開されます。
具体的に言うと、「カレー:2皿」必要な場合、「ご飯:2合」→「白米:2合」・「水:600ML」必要 というように下位に必要数量が展開されていきます。
この構成展開は、MPS・MRPの基本となるので、覚えておいてください。
MPS・MRPの計算の流れ
続いて、MPS・MRPの計算の流れについてです。MPS・MRPの計算は次の順番に実行されます。
|
③が終わると、下位の構成品目の①所要量計算の実行となります。
①~③を、BOMの上位の品目から下位の品目まで、完了するまでMPS・MRPが実行されます。
所要量計算
所要量は、「計画独立所要量(予測で必要な数量)or 受注数量」 と 「現在庫数量・入庫予定・出庫予定・安全在庫」を比較して、必要な生産・購買数量を算出します。
例えば、カレー:5皿 という受注が入った時、今から何皿カレーを作らないといけないのかを計算するのが所要量計算です。
所要量の計算式は以下です。
所要量 =
|
それぞれの言葉の定義と、カレーでの例はこのようになります。
項目名 | 定義 | 例 |
計画独立所要量 or 受注数量 | 最終的に必要な数量 | カレー:4皿の受注 |
安全在庫 | 会社として、何かあった時のためにストックしておくための数量。現在庫としてあったとしても、所要量計算上からは「ないもの」としてカウントします。 | 1皿はお客様に即提供できるように作り置きしておく |
出庫予定 | 指図出庫予定の数量 | 前の注文で4皿分のカレーを提供予定 |
入庫予定 | 指図入庫予定 or 購買入庫予定の数量 | 現在3皿分のカレーを調理中 |
現在庫数量 | 現時点の在庫数量 | 現在4皿調理済みのカレーがある |
上の例をもとに、いくらカレーの生産(調理)が必要かを計算すると、、、
所要量 =
- +「計画独立所要量 or 受注数量」:4
- +「安全在庫」:1
- +「出庫予定」:4
- -「入庫予定」:3
- -「現在庫数量」:4
→2皿の生産が必要
ということがわかります。
このように、所要量をもとにいくつ生産(半製品の場合) or 購買(原材料の場合)をしないといけないかを計算します。
ロットサイズを加味した所要量算出
ロットサイズとは、生産・購買の数量が、いくらずつできるのか という意味です。
例えば、ポッキーは1本ずつ生産はできなくて、12本(1袋)で購買ができます。 この「12本」というのをロットサイズ といいます。
ロットサイズは、製造機器のスペックによったり、仕入先の販売したいまとめ単位によったりします。
さきほどのカレーを例にすると、例えば、カレーのロットサイズは3皿(3皿ずつしか生産できない)とします。
所要量計算で「2皿必要」という計算結果になりましたが、ロットサイズを加味すると、「3皿生産」となります。
また、SAPのロットサイズには、以下の4つの項目があります。
項目名 | 定義 |
最小ロットサイズ | 最小でいくら生産・購買する必要があるか |
最大ロットサイズ | 最大でいくらまで生産・購買できるか(最大ロットサイズを超える所要量となる場合は、別の製造指図・購買発注伝票が登録されるようになります) |
丸め数量 | いくらずつ生産・購買できるか |
固定ロットサイズ | ロットまとめ方式が「FX(固定指図数量」の場合、固定でいくら生産・購買できるか |
それぞれの設定値によって、所要量が変わります。
従属所要量算出(下位の品目の所要量)
続いて、②ロットサイズを加味した所要量算出 で出た数量をもとに、BOMマスタの下位の品目(構成品目)の所要量を算出します。
下位の品目の所要量を「従属所要量」といいます。
カレーの例では、②ロットサイズを加味した所要量算出で、「カレー:3皿必要」という結果になりました。
そのため、下位の品目である「ご飯」「ルゥ」はそれぞれ、
- ご飯:3合
- ルゥ:600ML
必要。 ということになります。
この従属所要量の結果をもとに、「ご飯」「ルゥ」でそれぞれ
- 所要量計算
- ロットサイズを加味した所要量算出
- 従属所要量算出(下位の品目の所要量)
と順番に実行していきます。
上位の品目から実行し、最下位の品目まで実行できれば、MPS・MRPは完了です。
各品目が必要な日付
続いて、各品目がいつ必要なのかを算出するロジックについて説明します。
まずベースとなる日付は、「計画独立所要量 or 受注」の日付です。
このベースの日付から逆算して製造指図の日付、購買伝票の日付を算出します。
では、製造にかかる日付・購買にかかる日付をどこでセットするかというと、品目マスタ(MRP2)で所要日付を設定します。
内製日数 | 生産にかかる日数 |
納入予定日数 | 仕入先から納入にかかる日数 |
入庫処理日数 | 入庫処理にかかる日数 |
- 半製品の場合:「内製日数」、「入庫処理日数」を設定
- 原材料の場合:「納入予定日数」、「入庫処理日数」を設定
例えば、カレーを作るための品目マスタが、それぞれ以下の設定だった場合で説明します。
品目 | 内製日数 | 納入予定日数 | 入庫処理日数 |
カレー | 1 | 0 | 0 |
ご飯 | 1 | 0 | 0 |
白米 | 0 | 5 | 1 |
水 | 0 | 1 | 0 |
カレー1皿の受注を、9/15 に入った場合、9/15から逆算して、それぞれの品目が以下の日付から生産・購買がされる伝票となります。
- カレーの製造指図:9/14(受注の9/15から、内製日数:1日をマイナス)
- ご飯の製造指図:9/13(カレーの9/14から、内製日数:1日をマイナス)
- 白米の購買発注:9/7(ご飯の9/13から、納入予定日数:5日・入庫処理日数:1日をマイナス)
- 水の購買発注:9/12(ご飯の9/13から、納入予定日数:1日をマイナス)
サマリ
MPS・MRPってどういうものか、どういうロジックで所要量・所要日付が計算されるかを解説してきました。
MPS・MRPは、生産計画の根幹となる機能です。
ユーザからはどのような機能で、どういう設定が効いてくるのかを聞かれると思うので、ぜひ自分の中で腹落ちさせて、ユーザに説明をしてみてください。
参考になる記事
MPS・MRPを実行するために重要な品目マスタのパラメータ設定について、こちらの記事で解説しています。
MPS・MRPを実行するうえで、「方針グループ」・「消費モード」というのは重要な考えになります。こちらの記事で解説しています。
とくさん、
お世話になっております。劉です。
Blogから色々勉強できて、本当にありがとうございます。
下記結果2の計算方法を理解出来ていないので、
詳しく説明いただけないでしょうか。
所要量 =
+「計画独立所要量 or 受注数量」:5
+「安全在庫」:1
+「出庫予定」:4
-「入庫予定」:3
-「現在庫数量」:4
→2皿の生産が必要
よろしくお願いいたします。
劉
劉さん
ブログ読んでいただき、ありがとうございます。
記載ミスで、正しくは
所要量 =
+「計画独立所要量 or 受注数量」:4
+「安全在庫」:1
+「出庫予定」:4
-「入庫予定」:3
-「現在庫数量」:4
でした。
ブログ修正済みです。
とくさん
お世話になっております。劉です。
早速ご回答いただき誠にありがとうございます。
理解できました。
よろしくお願いいたします。