【SAP】MRP方針グループ・消費モードを徹底解説!

MRP方針グループとは、MRPが「計画独立所要量」、「受注」、もしくはその「両方」をもとに、どういうロジックで所要量計画を立てるかの大元の設定になります。

この記事では、SAPで設定できる各方針グループの説明と、一部方針グループで出てくる「消費モード」という考え方の解説をします。

SAPでMRPを使用するうえで、必ず設定しなければならないパラメータなので、この記事でぜひ理解を進めてください。

※MRPって何?? って方は、まずはこちらの記事を読んでみてください。

 

見込生産・受注生産

まず「方針グループ」を設定するうえで、生産方式が「見込生産」なのか「受注生産」なのかを把握する必要があります。

見込生産は、需要予測をもとに、見込みで生産をすることです。

例えば、コンビニのパンは日にいくら売れるか、予測をもとに生産をします。

 

受注生産は、受注を受けた後に生産をすることです。

例えば、船や電車、オーダーメイドスーツは、受注を受けた後に生産をします。

 

MRPは、需要予測(計画独立所要量)をもとに計算するのか、受注をもとに計算するのか、設定値によって挙動が異なるため、まずは生産方式が「見込生産」なのか「受注生産」なのかを把握する必要があります。

 

方針グループ一覧

以下が、SAPで設定できる方針グループの一覧です。

設定値 名称 生産方式
10 見込生産 見込生産
11 見込生産/総所要量計画 見込生産
30 ロット生産 見込生産
40 最終組立ありの計画 見込生産
70 組立レベルでの計画 見込生産
20 受注生産 受注生産
50 最終組立なしの計画 受注生産
74 最終組立なしの組立品目計画 受注生産

それぞれの設定値の挙動については、下で解説します。

まずは、見込生産・受注生産で、どの設定値が使えそうなのか、把握します。

 

見込生産の方針グループ

10(見込生産)

10:見込生産では、「計画独立所要量」のみ考慮されます。つまり、「受注」はまったく考慮されません。

10:見込生産は、「正味所要量」が算出されます。「正味所要量」とは、実際に必要な数量 という意味です。

算出に使われるのは、計画独立所要量、入出庫予定、在庫 の3点です。

計算式は、以下です。

  • 計画独立所要量 + 出庫予定 – 入庫予定 – 在庫

計画独立所要量(需要予測数量)に対し、

  • 現在ある在庫、入庫予定 は、当てこめるのでマイナス
  • 出庫予定 は、在庫が出ていくため追加で生産する必要があるので、プラス

という考え方で、計画手配の数量が算出されます。

10_見込生産

 

11(見込生産/総所要量計画)

11:見込生産/総所要量計画は、10:見込生産と同様で「計画独立所要量」のみ考慮されます。つまり、「受注」はまったく考慮されません。

10:見込生産との違いは「正味所要量」が算出のではなく、「総所要量」が算出されます。

「総所要量」は、在庫が考慮されません。

計算式は、以下です。

  • 計画独立所要量 + 出庫予定 – 入庫予定
11_見込生産_総所要量

11:見込生産/総所要量計画 は、受注・在庫を考慮しないので、「強制生産」とも言われています。

また、品目マスタ-MRP3の「二重MRP区分」に”総所要量計画”をセットする必要があります。

 

30(ロット生産)

30:ロット生産では、「計画独立所要量」・「受注」が合わせて考慮されます。

計算式は、以下です。

  • 計画独立所要量 + 受注

 

計画手配は、計画独立所要量と受注数量を合わせた数量にまとめられます。

また、まとめられた数量は、ロットまとめ方式に従って登録されます。

30_ロット生産

 

40(最終組立ありの計画)

40:最終組立ありの計画では、「計画独立所要量」・「受注」が合わせて考慮されます。

30:ロット生産 と異なるのは、受注が入ると、計画独立所要量が打ち消される点です。

計画独立所要量の打ち消し方は、品目マスタ-MRP3の「消費モード」にて決まります。

 

消費モード

消費モードには、以下4パターンがあります。

  1. 逆消費
  2. 逆消費・順消費
  3. 順消費
  4. 順消費・逆消費

 

1:逆消費の場合、

  • 受注の納期日付より前にある計画独立所要量と相殺をします。
  • 「逆消費期間」を設定する場合、設定した日付分だけ前の計画独立所要量を見にいき、相殺します。
  • 仮に、受注数量が計画独立所要量を上回った場合、上回った数量分の計画手配が別途登録されます。
逆消費

 

3:順消費の場合、

  • 受注の納期日付より後にある計画独立所要量と相殺をします。
  • 「順消費期間」を設定する場合、設定した日付分だけ後の計画独立所要量を見にいき、相殺します。
  • 仮に、受注数量が計画独立所要量を上回った場合、上回った数量分の計画手配が別途登録されます。
順消費

 

2:逆消費・順消費の場合、

  • 先に逆消費で計画独立所要量と相殺。不足する場合は順消費にて計画独立所要量と相殺。

 

4:順消費・逆消費の場合、

  • 先に順消費で計画独立所要量と相殺。不足する場合は逆消費にて計画独立所要量と相殺。
逆消費・順消費

 

消費モード・逆消費期間・順消費期間は、品目マスタ-MRP3にて設定します。

逆消費期間・順消費期間は、999日まで設定可能です。

 

70(組立レベルでの計画)

70:組立レベルでの計画は、「半製品」に対して設定します。

まずは半製品に対して、計画独立所要量を登録。

最終製品の受注が登録されると、BOM展開され、対象の半製品の入出庫予定・従属所要量が、登録してある計画独立所要量と相殺されます。

※受注による計画独立所要量は、消費モードの設定がキーになります。

 

使用ケースは、半製品がさまざまな最終製品に汎用的に使え、需要予測を半製品に対して実施するほうが簡単な場合、70:組立レベルでの計画 を使用します。

 

受注生産の方針グループ

20(受注生産)

20:受注生産では、「受注」を起点にMRPを実行します。(計画独立所要量の登録は、運用上しないことになります)

ポイントは、各受注明細レベルでMRPが実行され、受注明細ごとの計画手配が登録されることです。

 

また、受注生産の場合、MPS・MRPで下位のBOM展開がされ、計画手配・製造指図が登録されるとき、下位の品目も受注紐づきとなるかどうかを、品目マスタ-MRP4の「個別/包括所要量」にて設定します。

設定値は、以下3パターンがあります。

  • Blank(上位の品目に準拠)
  • 1(個別所要量)
  • 2(一括所要量)

最終製品が受注生産品で、下位品目も受注紐づきとする場合は、”Blank”でOKですが、

受注とは関係なく、見込で生産する場合は、”2″ を設定する必要があります。

 

“Blank” の場合は、上位の品目から引き継がれ、受注紐づきの製造指図となりますが、”2” の場合は、受注紐づきなしの製造指図となります。

個別包括所要量_指図イメージ

 

50(最終組立なしの計画)

50:最終組立なしの計画 は、最終製品のみ受注紐づき、下位の品目は見込生産の場合に使用します。

50:最終組立なしの計画 を使用する場合、以下のステップで処理されます。

  1. 計画独立所要量を最終製品に対して、登録
  2. MRP実行
  3. 最終製品の計画手配の指図タイプはVPで登録、下位品目の計画手配の指図タイプはKDで登録

VPは製造指図に変換できない指図タイプです。 つまり計画独立所要量から登録された最終製品の計画手配は製造指図に変換できない仕組みに 50:最終組立なしの計画では なっています。

下位の品目は、最終製品の需要予測をもとに生産を開始します。(下位品目は見込生産を想定のため、個別/包括所要量=”2″ で設定しておく必要があります。)

50_最終組立なし_処理ステップ1

 

続いて、受注が入ってきたとき、、

  1. 受注登録
  2. MRP実行
  3. 最終製品の計画手配の指図タイプはKDで登録

受注により計画独立所要量が相殺され、もとあった指図タイプ:VPの計画手配が削除され、指図タイプ:KD(指図変換可能)の計画手配が新たに登録されます。

※受注による計画独立所要量は、消費モードの設定がキーになります。

50_最終組立なし_処理ステップ2

 

74(最終組立なしの組立品目計画)

74(最終組立なしの組立品目計画)は、受注生産の50(最終組立なしの計画)と、見込生産の70(„組立レベルでの計画)合わせ技です。

  1. 半製品に対して計画独立所要量を登録します
  2. MRP実行により、半製品より下位の品目の生産・調達を実施
  3. 最終製品の計画手配 or 製造指図登録をトリガーにMRPを実行
  4. 半製品の従属所要量・入出庫予定が登録され、計画独立所要量と相殺され、計画手配(指図タイプ:KD)が登録される。

※受注による計画独立所要量は、消費モードの設定がキーになります。

また、方針グループ:74(最終組立なしの組立品目計画)の場合、二重MRP区分=”3”(最終組立なし半製品組立計画)を設定する必要があります。

 

サマリ

ここまでMRPの方針グループについて解説してきました。

各会社の生産方式や、BOM階層ごとに生産計画の立て方が異なります。

MRPを実行する場合、この方針グループの設定が肝となるので、それぞれの方針グループがどのような挙動をするのかを理解し、ユーザと検討を進めていってみてください。

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2件のコメント

じゅず より:

※「【SAP】生産能力計画(能力評価・負荷平準化)について徹底解説!」の記事に誤って同じ投稿してしまったので、そちらは削除いただいて大丈夫です。

「計画手配は、計画独立所要量と受注数量を合わせた数量にまとめられます。」の部分がなぜそうなるのかがわかりませんでした。

計画独立所要量=需要予測に応じた所要量
受注数量=実際に受注があった製品の数量
という認識なのですが、計画独立所要量という予測に対し受注数量は実績だと思うので、実績計画独立所要量+受注数量とするのに違和感があります。

受注数量<計画独立所要量の場合は、予測の範囲内に受注数量が収まっているので計画独立所要量をそのまま計画数量とし、逆に受注数量>計画独立所要量の場合は受注数量が予測を上回っているので、上回っている分の所要量を追加で計画手配に登録する、というのが正しいと感じるのですが、間違いでしょうか?

とく より:

ご質問は、MRPタイプ:30(ロット生産)のことで合ってますでしょうか?
おっしゃるような、計画独立所要量を受注数量で打ち消すようなことをしたいのであれば、MRPタイプ:40を使用します。

認識が間違ってる、間違っていないではなく、SAPは各企業の生産計画のスタイルに合うMRPタイプをいくつか用意しているので、自分たちの考えに合うMRPタイプを使用します。

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TK
製造業界、素材産業にて、SAP ERPの導入・保守を経験。会社の情報システム部門→外資系コンサル会社→育休→独立(フリーランス)。 SAP導入プロジェクトの仕事をする傍ら、SAPに関する情報をブログで発信。