一度登録した計画手配を、次のMRPで日付や数量が修正された場合、生産現場が混乱してしまうことがあります。
そこで使うのが、「計画手配」という機能です。
この記事では、計画手配とは何か、どのように使用するのかということを解説していきます。
この記事はMRPに関することなので、大前提としてこちらの記事でMRPの概要を理解したうえで読んでいただけたらと思います。
計画タイムフェンスとは
計画タイムフェンスとは、MRP実行時に前回登録された計画手配を上書きするかしないかを制御する機能です。
計画タイムフェンスがない場合の業務イメージ
例えば、製造現場では昨日実行登録された計画手配を元に製造準備をしていたところ、本日実行されたMRPにより計画手配が上書きされた場合、混乱が生じます。
こんなイメージです。
昨日の段階では赤い部分の計画手配はなかったのですが、本日見てみると新しい計画手配は増えている・数量が変わっている、ということが起こります。
この急な生産計画の変更を起こさせないようにするのが、「計画タイムフェンス」の役割です。
計画タイムフェンスの仕様(概要)
それでは計画タイムフェンスを使用した場合、どのような動きになるかを解説していきます。
まず計画タイムフェンスには、日数を設定します。
例えば、「7日」と設定した場合、本日(MRP実行日)から7日後に計画タイムフェンスが置かれます。
また上の図のように、計画タイムフェンス内の計画手配は「確定」として扱われます。
続いて、新たな所要量登録や、所要量変更をした場合の動きについてです。
新たな所要量登録がされたり、所要量変更されたりすると、計画タイムフェンス直後の日付で計画手配が登録されます。
このように計画タイムフェンスを使用することにより、計画タイムフェンス内の計画手配は守られ、生産現場に混乱を招かないようにできています。
計画タイムフェンスの設定方法
計画タイムフェンスの設定方法は2種類あります。
- 品目マスタ単位に直接設定
- MRPグループに設定し、品目マスタにMRPグループを割当
品目マスタに直接設定する場合も、MRPグループを品目マスタに割り当てる場合も、どちらもMRP1ビューにて設定のため、品目 x プラント単位に設定できます。
どちらも「日数」をセットします。
生産現場として、どの品目でも計画手配の確定期間を一律としたい場合は、MRPグループを使用したほうがメンテナンス性はいいです。
品目単位で計画手配の確定期間を調整したい場合は、品目マスタ単位で設定するのがいいでしょう。
確定タイプごとの計画手配確定ケース
「計画タイムフェンスの仕様(概要)」にて、計画手配の確定・登録ケースについて説明しましたが、厳密にいうと、「確定タイプ」ごとに挙動が変わります。
ここでは、確定タイプごとに計画手配の確定・登録がどのように動くか、ケースごとに解説していきます。
確定タイプとは
「確定タイプ」とは、MRPタイプ内で設定される項目のことです。
そのため、コンフィグにてMRPタイプごとに、確定タイプを指定する必要があります。
確定タイプには、以下の値がセットできます。
値 |
挙動 |
|
すでにある計画手配 | 新規登録の計画手配 | |
Blank | 計画手配が確定されない | 所要日付に合わせて計画手配が登録される |
0 | 計画手配が確定されない | 所要日付に合わせて計画手配が登録される |
1 | 計画手配が自動確定される | 計画タイムフェンス直後に計画手配が登録される |
2 | 計画手配が自動確定される | 計画手配が登録されない |
3 | 計画手配が確定されない | 計画タイムフェンス直後に計画手配が登録される |
4 | 計画手配が確定されない | 計画手配が登録されない |
※ Blank と “0” の挙動は同じです。
文字だけの説明では分からないと思うので、図を使って説明していきます。
確定タイプ:Blank or 0
確定タイプ = Blank or 0 の場合、所要日付に合わせて計画手配が登録されます。
ただし、登録された計画手配は未確定で、新規所要登録・所要量変更された場合は、再度計画手配が上書きで登録されます。
確定タイプ = Blank or 0 は、登録された所要に対して自由に計画手配を登録したい場合に使用します。
ただし、このケースは一番初めに紹介した、現場が混乱をきたすケースにあたるので、使用する場合は要検討ください。
確定タイプ:1
確定タイプ = 1 の場合、計画タイムフェンス内の計画手配は確定として登録されます。計画タイムフェンス以降の計画手配は未確定として登録されます。
計画タイムフェンス内で新規所要登録・所要量変更された場合は、計画タイムフェンス直後の日付で計画手配が登録されます。
確定タイプ = 1 は、計画タイムフェンス内の計画手配は確定(変更させない)とする場合、かつ 急遽追加された所要は計画タイムフェンス直後に計画手配として登録したい場合に使用します。
この場合、急遽追加された所要が計画タイムフェンス直後になってしまうため、緊急で生産・購買しないといけない場合は運用での対応が必要です。
(計画手配だけは登録しておき、計画手配上 もしくは製造指図・購買発注に変えたのちに日付情報を変更などの運用が必要)
確定タイプ:2
確定タイプ = 2 の場合、計画タイムフェンス内の計画手配は確定として登録されます。計画タイムフェンス以降の計画手配は未確定として登録されます。(ここは確定タイプ = 1 と同じです)
計画タイムフェンス内で新規所要登録・所要量変更された場合は、計画手配は登録されず、所要がそのまま残る状態となります。
確定タイプ = 2 は、計画タイムフェンス内の計画手配は確定(変更させない)とする場合、かつ 急遽追加された所要はそのままにし、マニュアルで対応したい場合に使用します。
この場合、急遽追加された所要がそのまま残ってしまうため、マニュアルで製造指図・購買発注の登録をするといった運用での対応が必要です。
確定タイプ = 1 と異なる点は、いったん計画手配を計画タイムフェンス直後に登録しておきたいか、マニュアルで所要に対する製造指図・購買発注を登録する運用としたいか、です。
確定タイプ:3
確定タイプ = 3 の場合、計画手配は未確定として登録されます。
計画タイムフェンス内で新規所要登録・所要量変更された場合は、計画タイムフェンス直後の日付で計画手配が登録されます。
確定タイプ = 3 の場合、MRP実行後にマニュアルで確定期間の日付を入力し、計画手配の確定処理ができます。
確定タイプ = 3 は、生産計画担当者が都度確定期間を指定したい場合、かつ 急遽追加された所要は計画タイムフェンス直後に計画手配として登録したい場合に使用します。
確定タイプ:4
確定タイプ = 4 の場合、計画タイムフェンス内の計画手配は確定として登録されます。計画タイムフェンス以降の計画手配は未確定として登録されます。
計画タイムフェンス内で新規所要登録・所要量変更された場合は、計画手配は登録されず、所要がそのまま残る状態となります。
確定タイプ = 4 の場合、確定タイプ = 3 と同様に、MRP実行後にマニュアルで確定期間の日付を入力し、計画手配の確定処理ができます。
確定タイプ = 4 は、生産計画担当者が都度確定期間を指定したい場合、かつ 急遽追加された所要はそのままにし、マニュアルで対応したい場合に使用します。
サマリ
ここまでで計画タイムフェンスの使用イメージと設定方法、確定タイプごとのMRP挙動について解説してきました。
計画タイムフェンスを使用することにより、一度登録した計画手配を確定情報として扱い、上書きさせないようにブロックさせることができます。
これにより、一度出た生産計画情報が変更されることがなくなるため、急な所要追加による製造現場の混乱を回避することができます。
また、確定タイプごとに、急遽登録された所要を計画タイムフェンス直後に計画手配を登録するか、マニュアルで対応するかを決めることができます。
SAPを導入するクライアントがMRPを厳密に使いたい場合、計画タイムフェンスを使うケースが多いです。
計画タイムフェンスの使い方、確定タイプごとのMRPの動きについて理解いただけたと思うので、この記事が運用設計の助けになればと思います。