販売価格は、条件によって複雑になります。
例えば、みなさんが普段する買い物でも、通常の価格に加え、
- 10個以上お買い上げの場合は、5%OFF(値引き)
- 北海道・沖縄の場合は、送料500円(運賃)
- 海外旅行先の空港での買い物は、免税(税)
など、さまざまな価格変更パターンがあります。
SAPでの販売管理ではさまざまなパターンに合わせた価格を、条件マスタ というマスタにて設定します。
また同じ品目でも、得意先ごと・販売エリアごとなどによって価格設定を変えられます。
この記事では、SAPの価格をどのように設定し、受注伝票上にどのように価格が読み込まれる(決定される)のかを、わかりやすく解説します。
条件マスタ(価格)の設定
価格設定手順
条件マスタ(価格)の設定は、T-code:VK11でおこないます。
まずは、「条件タイプ」と「価格を設定するキー項目の組合せ」を選択します。
キー項目レベルに対して、「価格」「有効期限」を設定していきます。
例えば、キーが得意先・販売エリアだった場合、得意先ごと・販売エリアごとに価格を変えることができます。
(得意先ごとに、関西スーパーには100円で販売、マルハチには120円で販売 みたいな設定ができます。)
また、通常の運用では「有効期限」を設定します。
初期設定では、T-code:VK11 で設定し、
価格改定時は、T-code:VK12 を使用します。
VK12変更すると、1つ前に登録されていたレコードは削除されず、有効終了日が2020/5/31に変わります。
そして、2020/6/1になったのちに登録される受注伝票には、120円の価格で値が入るようになります。
運用上検討しないといけないのは、「受注は価格改定前」「請求は価格改定後」というケースです。
100円で請求するのか、120円に修正し請求するのかは、会社により方針次第のため、SAPの仕様を踏まえて、運用検討する必要があります。
スケール
スケールとは、金額や数量により、価格の値を変更することです。
例えば、
- 1000円以上お買い上げの場合は、5%OFF
- 100KG以上お買い上げの場合は、1KGにつき10円OFF
など、スケール基準(金額や数量)により、計算タイプ(パーセントや数量当たり金額)の設定ができます。
設定方法は、まず価格設定画面の上部にある 階段みたいなボタンをクリックするとスケールごとに価格設定可能な画面に遷移します。
まずスケール基準(数量・金額・重量・容積など)を選択します。
スケール基準に対して、
- スケール数量
- 価格
- いくら当たりの価格か
を設定します。
例えば、スケール基準 “C” 数量)の場合、スケール数量ごとに価格がいくらか、という設定ができます。
スケール数量 | 価格 | いくらあたり |
1 PC | 100円 | 1 PC |
10 PC | 90円 | 1 PC |
100 PC | 80円 | 1 PC |
この場合、受注数量が 20 PC であれば、(20 PC x 90円 = 1,800円) という計算になります。
価格決定設定手順
続いて、価格決定の設定手順について解説します。
価格設定の4大要素
価格は、次の4つの要素によって決定されます。(すべてカスタマイズにて設定していきます。)
要素 | 意味合い |
価格決定表 |
|
条件タイプ |
|
検索順序 |
|
条件テーブル |
|
これら4つの要素は、このようなつながりになっています。
カスタマイズで「①価格決定表、②条件タイプ、③検索順序、④条件テーブル」の設定をしたものをベースに伝票に価格情報が読み込まれる仕組みになっています。
カスタマイズ設定方法
<伝票-価格決定表(N:1)>
伝票登録時に指定する販売エリア・伝票タイプ・得意先ごとに、どの価格決定表を割り当てるか設定します。
伝票価格決定区分は、販売伝票タイプに1:1で割り当てておきます。
得意先価格決定区分は、得意先マスタに1:1で割り当てておきます。
<価格決定表-条件タイプ(1:N)>
価格決定に使用する条件タイプ(価格・値引き・追加料金・運賃・税金など)を割り当てます。
<条件タイプ-検索順序(1:1)>
条件タイプごとに、価格マスタを検索するための順序設定(検索順序)を割り当てます。
<検索順序-条件テーブル(1:N)>
検索順序では、価格マスタを検索するためのキー項目である条件テーブルを割り当てます。
検索順序では、条件テーブルを複数割り当て、上から順番に価格が設定されている条件テーブルを検索。 一番最初に価格設定がされている条件テーブルの価格を伝票にセットします。
伝票登録時の価格処理イメージ
続いて伝票登録したときの価格処理の解説をします。
価格処理ステップは6つです。
- 伝票から販売エリア・伝票タイプ・得意先をキーに、「価格決定表」をチェック
- ①で検索された「価格決定表」の「条件タイプ」をチェック
- ②の「条件タイプ」に紐づいている「検索順序」をチェック
- ③の「検索順序」から優先順位の高い順に「条件テーブル」をチェック
- ④でヒットした「条件テーブル」の「価格」をチェック
- ⑤の価格を受注伝票にセット
※決定表の条件タイプをすべてチェックまで②~⑥をループで実行
① 伝票から販売エリア・伝票タイプ・得意先をキーに、「価格決定表」をチェック
受注伝票のキーから、価格決定表:RVAA00を✔
② ①で検索された「価格決定表」の「条件タイプ」をチェック
価格決定表:RVA00から、条件タイプをチェック。 上から価格を設定していくのでまずは条件タイプ:PR00から。
③ ②の「条件タイプ」に紐づいている「検索順序」をチェック
条件タイプ:PR00に紐づく、検索順序:PR02をチェック
④ ③の「検索順序」から優先順位の高い順に「条件テーブル」をチェック
検索順序:PR02から条件テーブルを上から検索。 上から検索していき、受注伝票の販売組織・流通チャネル・得意先・品目がヒットすることを確認。
⑤ ④でヒットした「条件テーブル」の「価格」をチェック
検索でヒットした受注伝票の販売組織・流通チャネル・得意先・品目の、価格:160円をチェック
⑥ ⑤の価格を受注伝票にセット
価格:160円を受注伝票にセット。
条件タイプがまだ残っているので、②条件タイプ:RA00 をチェックする処理へ
※決定表の条件タイプをすべてチェックまで②~⑥をループで実行
(参考)SDマスタ解説記事
SD(販売モジュール)で使用されるマスタをこちらの記事で解説しています。
各マスタの意味や、マスタ同士の紐づきについて解説しています。
条件マスタ(価格マスタ)も、他のSDマスタの設定があって効いてくるので、こちらも参考に読んでみてください。
今日学んだこと!
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