SAPのCO・PPモジュールを使うことにより、品目の標準原価計算をすることができます。
この記事では標準原価計算の手順について初心者でも分かるように解説していきます。
また、こちらの記事でCOモジュールの概要について解説しています。 CO初めての方はCOモジュールの全体感を掴んでからこの記事を読み進めた方が理解が進みやすいと思いますので、まずはこちらの記事を読んでみてください。
Contents
標準原価計算の考え方
まずは標準原価計算の考え方を説明したのちに、実施手順、実施のためのマスタ設定について解説していきます。
標準原価計算とは、理論数値をもとに各品目の原価を算出する機能です。(理論数値って何? というのはこのあと説明します。)
まずイメージから理解してもらいたいので、こちらの図を使って説明します。
まずは
- 原材料の品目マスタに材料費(標準原価)
- 活動単価に加工費
が設定されているところからスタートです。
この情報を元に半製品・製品の標準原価積上をした結果がこちらです。
例えば、半製品:ご飯 は、
- 白米 1合:100円(材料費)
- 水 300ML:300円(材料費)
- 炊く 1H:800円(加工費)
- →ご飯 1合:1200円
という原価計算がされます。
このように「BOMの構成品目の材料費 x 数量」 + 「作業手順の加工費 x 作業時間」を元に上位品目の標準原価が計算される仕組みになっています。
標準原価計算の手順
ここまでで標準原価がどのように計算されるか概要レベルで理解してもらえたかと思います。
続いてはSAPでどのような手順で(トランザクションコードで)標準原価計算をしていくか解説していきます。
標準原価計算は次の 6 Step で実施していきます。
① 生産マスタ登録・変更
まずは生産マスタ(BOM・作業手順など)を登録していきます。
こちらの図でいうと
- 上位品目と下位品目の紐づき設定(BOM T-code:CS01)
- 作業内容と作業時間の設定(作業手順 T-code:CA01)
を設定していきます。
標準原価積上のマスタ設定はこちらの記事で詳細解説していきますので、気になる方は読んでみてください。
② 原材料の標準原価設定
次に原材料の標準原価を設定していきます。(T-code:MM02)
品目マスタ登録画面の会計1ビュー or 原価2ビュー にて設定をします。
設定する原価は仕入単価にするケースもありますが、大量購入した場合は単価5%off といったケースもあるので、どの値を標準原価としてセットするかはクライアントに寄るため、要件確認が必要です。
③ 計画活動価格設定
続いて③計画活動単価設定 では、加工費算出のための活動単価の設定を行っていきます。
活動単価の設定方法は大きく3つのパターンに分かれます。
この記事では一番シンプルな直接活動単価を設定するパターンで解説していきます。
他のパターンについてはこちらの記事で解説していきますので、気になる方は読んでみてください。
活動単価は、活動タイプ x 原価センタ単位で設定していきます。(T-code:KP26)
活動タイプは、1作業につき6つまでSAP標準で項目を持たせることができます。
例えば、
- 人時間・機械時間 といった2項目を持たせたり、
- 直接作業時間・段取り時間(間接)・片付け時間(間接) といった3項目を持たせたり、
ここはクライアントによって、どのような作業時間で加工費の計算をさせたいかに寄ります。
④ 標準原価積上
①②③の設定で標準原価積上をする下準備が整いました。
あとは標準原価積上を実行していくのみです。(T-code:CK11N)
標準原価積上は、原材料→半製品→製品といったBOMの下階層から積みあがっていきます。
⑤ 標準原価マーク
④の標準原価積上をしたら、即、計算結果が標準原価としてセットされるわけではないんです。
原価情報とは厳密な情報なので即反映はされません。 そのため、標準原価積上は「シミュレーション機能」と思っていただくのがよいです。
④の標準原価積上後、計算結果に問題がなければ、「マーク」という処理をします。
「マーク」は標準原価計算結果を上書きするための予約状態のことです。
マークをすると、品目マスタの「次期標準原価」に値が入ります。
⑥ 標準原価リリース
そして最後に、標準原価リリースをします。
「リリース」は、「マーク」状態の標準原価を採用することです。
リリースをすると、品目マスタの「次期標準原価」の値が「標準原価」にが入ります。
どの企業でも標準原価は一般的に月初に最新状態となります。
そのため、月末までに「標準原価積上」→「マーク」としておき、月初にジョブで自動的に「リリース」とするクライアントがほとんどです。
サマリ
ここまでで標準原価計算の考え方・手順について解説してきました。
標準原価計算の処理自体は手順④⑤⑥を実行するのみなので簡単ですが、実行するための事前準備が大変です。
- 原材料の標準原価にどのような値をセットするか
- 計画活動数量にどの原価要素を配賦するか
- 活動タイプにどのような項目を用意するか
- 活動タイプにどの原価要素を紐づけるか
- など。。。
まずは標準原価計算の手順を説明したのちに、クライアントと事前準備について検討に入るのがスムーズかと思うので、この記事を使って説明してもらえればと思います。