【SAP】原価センタ配賦について徹底解説!

原価センタ配賦は、活動単価(加工賃)を算出するための処理です。

この記事では原価センタ配賦するためのマスタ設定と、実施方法について解説していきます。

付替・配賦について

原価センタ配賦とは、製造の活動単価(加工賃)を算出するためにする費用配賦をすることです。

まず前提として、SAPでは2つの費用配分方法があります。

  • 付替
  • 配賦

 

付替は、一次原価要素(=会計の勘定科目)間で、費用を部門Aから部門Bに付け替えることです。

例えば、期中に調達部から製造部に人事異動があり、異動された方の「給与手当」を調達部から製造部に”付替”をする場合に使用します。

配賦は、一次原価要素から二次原価要素(COのみ扱う勘定科目)へ、費用を部門Aから部門B、C、Dに配分することです。

会社にはさまざまな費用(給与・減価償却費・消耗品費・電力費・水道費など)があり、これらを加味して活動単価(加工賃)を算出する必要があります。

そのため、直接部門直課できない費用を、ある比率で按分することを配賦といいます。

例えば、製造部の「給与手当」を、製造1課・2課に、作業時間比率で「人件費」として按分する場合に使用します。

付替・配賦の違い

 

原価センタ配賦のためのマスタ設定

それでは続いて、配賦処理をするためのマスタ設定について解説していきます。

原価センタ配賦のために使用するマスタは、以下の5つです。

  • 原価センタ(T-code:KS01)
  • 原価要素(T-code:FS00)
  • 活動タイプ(T-code:KL01)
  • 統計キー数値(T-code:KK01)
  • 配賦周期(T-code:KSU7/KSU1)

そして、各マスタの紐づきはこのようになっています。

原価センタ配賦のためのマスタ紐づき

原価センタ・原価要素・活動タイプ・統計キー数値をそれぞれ設定し、最終的に配賦周期にて原価センタ配賦の細かな設定をしていきます。

それではそれぞれのマスタ設定について解説していきます。

 

原価センタ(T-code:KS01)

原価センタは「費用計上」をする単位で設定をします。

そのため、間接費を計上するための「部門」や加工費計上のための「製造工程」を原価センタとして設定することが事例として多いです。

 

また原価センタをまとめるマスタとして、「原価センタグループ」というマスタがあります。(T-code:KSH1)

例えば、生産企画部・生産管理部・製造部という原価センタを、生産統括部という原価センタグループでグルーピングしたりします。

配賦にも「原価センタグループ」への配賦もできたり、原価センタレポートで分析に使えたりするので、部門・工程を取りまとめる原価センタグループも合わせて設定しておくのが一般的です。

 

設定方法は、こちらの記事で解説していますので、気になる方は読んでみてください。

【SAP】原価センタ設定方法について徹底解説!

 

原価要素(T-code:FS00)

原価要素は「付替・配賦について」のところで説明しましたが、一次原価要素と二次原価要素の2種類があります。

  • 一次原価要素:会計勘定科目と同じ
  • 二次原価要素:COのみで使用する勘定科目

一次原価要素は、会計の勘定科目と同じ勘定科目を登録します。

今回、配賦で使用するのは二次原価要素のため、管理会計で使用したい原価要素単位で登録していきます。

また原価要素も「原価要素グループ」として、グルーピングのマスタが用意されています。(T-code:KAH1)

 

設定方法は、こちらの記事で解説していますので、気になる方は読んでみてください。

【SAP】原価要素の設定方法について徹底解説!

 

活動タイプ(T-code:KL01)

活動タイプとは、製造実績で作業時間などを計上する項目です。

配賦でなぜ必要かというと、活動タイプに紐づいた原価要素により費用配賦されるためです。

原価要素・活動タイプ・原価センタ、そしてPPの作業区マスタはこのように紐づいています。

PPCO配賦マスタ_紐づきイメージ

また、活動タイプの作業時間の比率によって原価センタ配賦をすることもできます。

活動タイプ_配賦比率

 

統計キー数値(T-code:KK01)

統計キー数値は、原価センタ配賦の配賦基準値を設定します。

統計キー数値では固定値・合計値の2種類を設定できます。

固定値は、会計年度で配賦基準が変わらないものを設定します。

例えば、従業員数・土地占有面積・家屋取得価格など。

 

合計値は、会計期間ごとに配賦基準が変わるものを設定します。

例えば、作業工数・電力/水道使用量など。

 

設定方法は、こちらの記事で解説していますので、気になる方は読んでみてください。

【SAP】統計キー数値設定方法について徹底解説!

 

配賦周期(T-code:KSU7/KSU1)

配賦周期では、以下の内容を配賦周期 x セグメント単位で設定していきます。

  • 配賦元原価センタ
  • 配賦元原価要素
  • 配賦先原価センタ
  • 配賦先原価要素
  • 配賦基準(固定比率・変動比率)

※計画周期(標準原価用)と実績周期(実際原価用)の設定内容が同じでも、ダブルメンテナンスをする必要があります。

  • 計画配賦周期登録(T-code:KSU7)
  • 実績配賦周期登録(T-code:KSU1)

 

配賦周期で設定した配賦周期 x セグメントは、このように配賦内のセグメントがすべて実行されてから、次の配賦周期の実行がされます。

配賦実行順

また、相互配賦は配賦周期内であれば可能です。

 

活動単価計算

ここまでで原価センタ配賦のためのマスタ設定を解説してきました。

配賦を使用した製造の活動単価計算(加工賃計算)はこちらの記事で解説していますので、詳しく知りたい方は読んでみてください。

【SAP】計画活動単価の算出方法について徹底解説!

 

サマリ

原価センタ配賦は、活動単価(加工賃)を算出するために必要な処理です。

そのため、製造原価計算をする場合、必要な設定です。

間接費をどのように配賦していきたいかがポイントなため、経理部門にヒアリングしつつ要件を詰めていき、設定いただければと思います。

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TK
製造業界、素材産業にて、SAP ERPの導入・保守を経験。会社の情報システム部門→外資系コンサル会社→育休→独立(フリーランス)。 SAP導入プロジェクトの仕事をする傍ら、SAPに関する情報をブログで発信。