作業手順マスタとは、生産品目を製造するのに、どんな作業にいくら作業時間がかかるか といった作業情報を持たせたマスタです。
この記事では、作業手順マスタの設定方法について解説していきます。
Contents
作業手順マスタとは
作業手順マスタとは、生産品目を製造するための作業手順・作業時間を持つマスタです。
作業手順マスタには、事前に作業区マスタを設定しておく必要があります。(作業をどの作業区で実施するかを指定するためです。)
作業手順マスタの設定は、以下3つの機能に影響を与えます。
- 生産能力計画
- 作業時間実績計上
- 製造原価計算
生産能力計画
作業手順マスタは「作業時間」を管理するマスタです。
作業手順マスタの作業時間を使って、品目の生産に何時間かかるのか・いつ始まりいつ終わるのか というように「能力計画」に使用されます。
詳しくは、こちらの記事で解説していますので、読んでみてください。
作業時間実績計上
作業手順マスタの「作業時間」は、製造指図登録時に基本数量見合いで、標準作業時間が製造指図にセットされます。
また作業時間実績計上時のデフォルト値として製造指図の標準作業時間が提案されます。
詳しくは、こちらの記事で解説していますので、読んでみてください。
製造原価計算
作業手順マスタの「作業時間」およびCOモジュールで算出された「活動単価」を用いて、「加工費」の計算がされます。
活動単価はいわゆる時給のこと。 作業時間は製品生産のためにかかる時間のこと。 この2つを掛け合わせると、製品生産にかかる作業コスト(加工費)の算出がされます。
詳しくは、こちらの記事で解説していますので、読んでみてください。
作業手順マスタの設定構造
作業手順マスタの設定構造は、
- ヘッダ
- 順序
- 作業
の3段構造になっています。
後ほど設定方法については解説しますが、作業が直列でよい場合は、順序は1つでOKです。
代替順序や並列順序を使用する場合は、複数順序設定をする必要があります。
作業手順マスタ設定の前提マスタ
作業手順マスタを設定する前提として、品目マスタ・作業区の設定が必要です。
作業で生産する品目 と 作業で使用する作業区(作業場所・製造機器)を予め設定しておく必要があります。
作業手順マスタ登録(T-code:CA01)
それでは作業手順マスタ登録について、項目レベルで解説していきます。(画面ごとに区切って解説を入れていきます。)
トップ画面
トップ画面では、キー項目である以下項目を指定して、登録画面に入ってきます。
項目名 | 意味 |
品目 | 生産品目の品目コード |
プラント | 生産するプラント |
ヘッダ
グループカウンタ
グループカウンタは、作業手順マスタのバージョンを表します。(BOMの「代替BOM」と同じ役割です。)
例えば、季節変動でカレーのルー:200ML 作るのに、通常は作業時間:1.0Hでいいのだが、冬はよく煮込む必要があるので作業時間:1.2H 必要だとします。
この場合、グループカウンタ:1 では作業時間:1.0H。
グループカウンタ:2 には作業時間:1.2H。
と設定することにより、作業手順マスタの使い分けをできるようにします。
これを「グループカウンタ」を使って、1つの生産品目に対し、複数の作業手順情報を持たせることができます。
用途
通常の生産で使用する場合は、”1″(生産)でOKです。
他には、設計・一般・プラント保全などがあります。
ステータス
使用可する場合は、”4″(リリース済)とします。
作成段階で仮作成とし、使用不可とする場合は、”1″(作成済)などを選択します。
順序
順序では、作業順序の設定ができます。
順序では、以下3つのタイプの順序が設定可能です。
- 標準順序
- 代替順序
- 並列順序
どの順序で設定するかは、「順序カテゴリ」で選択します。
標準順序
標準順序は、作業を直列につなげられます。
代替順序
代替順序では、ロットサイズによって実施する作業を変更が可能です。
事例として、作業区をロットサイズによって使い分けたい場合に使用します。
例えば、100 PC までは切断機械:小 の作業区、100 PC 以上は切断機械:大 の作業区 というような設定です。
設定方法は、0010 → 0020 → 0030 → 0040は標準順序として設定。
0035を代替順序として、Fromロットサイズ・Toロットサイズを指定。(以下の例だとFrom 100, To 999,999)
そして分岐作業:0030、合流作業:0030 と指定します。
並列順序
並列順序では、作業の並列設定が可能です。
並列作業にすることにより、能力計算も並列を考慮した形で計算されます。
設定方法は、0010 → 0020 → 0040は標準順序として設定。
0030を並列順序として、分岐作業:0020、合流作業:0020 と設定します。
作業
作業では、以下項目を明細レベルで設定します。(複数作業設定する場合、複数明細設定します)
- 作業区
- 管理キー
- 基本数量
- 作業時間(標準値単位)
作業区
作業で使用する作業区(作業場所や製造機器)を指定します。
作業区マスタには、以下が設定されています。
- 標準値(作業時間計上項目)
- 原価センタ(加工費計上部門)
- 活動タイプ(作業時間が加工費として計上される勘定科目との紐づき)
標準値で、作業時間(標準値単位)の計上項目が決まります。
管理キー
管理キーは予めコンフィグで設定しておき、設定された管理キーを作業単位に指定します。
管理キーでは、作業日程計画・能力所要量・工程検査・自動入庫・印刷・再加工・原価計算などの機能ON/OFFを指定できます。
基本数量
基本数量とは、作業時間を設定するベースとなる数量です。
100 PC と基本数量に設定した場合、100 PC 生産にかかる作業時間を「作業時間」に設定します。
作業時間(標準値単位)
作業時間は、基本数量あたりにかかる生産作業時間を標準値単位で設定します。
標準値項目は、作業区マスタに設定した標準値キーをもとに出てきます。
標準値は、1作業明細・6項目まで設定できます。そのため、7項目以上の作業時間計上項目を用意したい場合は、2作業明細に分割する運用にします。
構成品目割当
バックフラッシュは、作業時間計上時に実行されます。
複数作業明細設定する場合、構成品目をどの作業で使用するか割当をしておくことで、割当した作業明細の作業時間計上時に、構成品目がバックフラッシュされるようになります。
バックフラッシュについては、こちらの記事で解説していますので、読んでみてください。
作業手順マスタ変更(T-code:CA02)
キー項目である、品目・プラント を指定してします。
このときに、変更番号・有効開始日を指定することにより、変更内容の反映日を指定することができます。
変更はこちらの記事で解説しているので、気になる方は読んでみてください。
変更は、作業・作業時間など、当初設定値を修正したり、新規作業の追加などをしていきます。
作業手順マスタ照会(T-code:CA03)
キー項目である、品目・プラント を指定し、作業手順マスタ情報の照会をします。
(参考)PPマスタ解説記事
PP(生産モジュール)で使用されるマスタをこちらの記事で解説しています。
各マスタの意味や、マスタ同士の紐づきについて解説しています。
作業手順マスタも、他のPPマスタの設定があって効いてくるので、こちらも参考に読んでみてください。
今日学んだこと!
- 作業手順マスタには基本的に、基本数量に対し作業時間がいくらかかるのかを設定
- T-code:CA01 にて登録(CA02:変更、CA03:照会)
- 代替順序・並列作業を使用したい場合は順序の設定が必要
- 工程検査・自動入庫などを実施したい場合は管理キーの設定が必要